「父親だから一緒にいたいのではなく、あなただから一緒にいたい」ペーパー・ムーン スクラさんの映画レビュー(感想・評価)
父親だから一緒にいたいのではなく、あなただから一緒にいたい
母親を交通事故で亡くした少女と詐欺師の男性の交流を描く。
モノクロだけど、余計な色彩が無い分、二人の会話や交流が鮮明に映る。
詐欺師の男性は少女の母親と一時期恋仲だったようで、
葬儀に花を手向けに来たところ、少女を遠方の親戚のところまで送る役目を押し付けられる。
さすがは詐欺師、そんな出来事も勝機とばかりにお金をだまし取る。
お金だけ取って、親戚のところへ少女を送り届けず、電車に1人乗せようとしたところ、
少女の方が一枚上手で、最初の約束通り、少女を車で送らないといけなくなった。
渋々と少女を連れながら、ついでにいつも通りの詐欺行為をしていたら、なんと彼女にも詐欺の才能が!
もちろん犯罪行為なんだけど、彼女なりの軸があることが物語を通して伝わってくるからそんなに嫌悪感ないかな。
男一人で詐欺をするよりも儲かるぞ!と二人で息ぴったりな詐欺行為の数々をこなしていくんだけど、なんか憎めない。
母親と恋仲にあったことから、「本当にお父さん?」と思う場面もあるけど、
血のつながりよりも心のつながりにフォーカスした描き方を徹底しているように感じた。
父親だから一緒にいたいのではなく、あなただから一緒にいたい、そんな言葉が聞こえたような気がした。
血のつながりも縁もゆかりもない大人と子供が疑似家族として絆を深めていく構成は
チャップリンの『キッド』を彷彿させる。キッドは1920年代、こちらは1970年代、
半世紀経っても、心の繋がりを拠り所とする人間関係が人々を魅了するのは変わらないようだ。
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