「シビレた!よそ者がひょっこり現れて地元民を救うというストーリーは『荒野のストレンジャー』と比較しないわけにはいかないだろう。なにしろ芦毛(あしげ)の馬が同じなのだ。」ペイルライダー jollyjokerさんの映画レビュー(感想・評価)
シビレた!よそ者がひょっこり現れて地元民を救うというストーリーは『荒野のストレンジャー』と比較しないわけにはいかないだろう。なにしろ芦毛(あしげ)の馬が同じなのだ。
なぞの静謐さをもって登場する両作は、復讐という点で同じだが、『荒野のストレンジャー』は単なるガンマンであり、本作では牧師という設定で、前作では描き切れなかった「赦し」をもテーマにしているのだろう。 強烈な水圧で山肌を、自然を破壊していく神への冒涜。穏やかさと愛を理想として牧師やハルが口にするいくつもの正論。メーガンやサラの恋心。これらのエピソードの対比と理想をうまく織り交ぜた脚本が成功している。
イーストウッドがプロテスタントの牧師であるpreacherであること、背中に銃弾の跡を残す過去の男であることをほのめかし、保安官への復讐も兼ねる決闘に挑むのだが、何より、聖職とは程遠いと思われるイーストウッドが牧師なのだ。メーガンが祈りを捧げている時に登場するこの血なまぐささをも漂わせる牧師の神秘性と暴力性が、逆により宗教的な意味を強めている。
そしてこの牧師も、『荒野のストレンジャー』と同様、拍車をシャリンシャリン言わせて地面を踏みしめ、人々の関心と信頼を勝ち得る。
何より遠景から地面を轟かせ、地肌を蹴散らして村に襲来するラフッドの一味。対照的に静かな意思を持って単独で歩みを進めてくる牧師。オープニングからしびれまくりなのだ。また、引きで俯瞰で見せておいてからグッと近づいて顔のアップ、男たちの顔・顔・顔。
貸金庫から銃を取り出しカラーをしまうシーンなど、ほんの短くはあるが重要な点を凝縮しており拍手を送りたい。また、夜更けに犬のお墓の前で牧師とメーガンが話をするシーンで、牧師はメーガンを「girl like you」と言ってから「woman」といい直す。こういった細かい点でも牧師の女性たちへの配慮が上手いと感じる。
町のはずれで、雪をかぶった山を背景にたちはだかる牧師のなんと美しいことか!
一点だけ、サラ(キャリー・スノッドグレス)はもう少し若い方が説得力があったのではないか。