プロヴァンス物語 マルセルの夏のレビュー・感想・評価
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【一夏の経験は少年を大人への一歩を踏み出させる。フランスの国民的作家、マルセル・パニョルの自伝的小説「少年時代」を、『わんぱく戦争』などの名匠、イヴ・ロベール監督が詩情豊かに映画化した作品。】
■お針子と、真面目な教師の間に生まれた少年・マルセルは、幼いうちから読み書きに秀でていた。 やがて弟、そして妹も誕生し、パニョル一家は夏のヴァカンスを過ごすため、ローズ伯母とその夫・ジュール伯父が借りている丘陵の緑とセミの声に包まれた別荘に向かう。 ◆感想 ・観ていてとても気持ちの良い映画である。それは、聡明な少年がある夏休みに経験したことが、鮮やかに描かれているからである。 ・プロヴァンスの豊かな自然を背景に、マルセル少年が子供が生まれる過程に疑問を抱いたり、誇りに思っていた父が、駆りの腕で伯父さんに劣る事をハラハラしながら観て居たり、弟の存在が何だが、疎ましく思う姿や、更に誕生した新たなる命をドキドキしながら観る姿。 ■イキナリ、私事で恐縮であるが、私は小学一年の時から夏休み、冬休みには母の祖父母の家にほぼ休みの間、行っていた。 東京駅で新幹線に乗り、(当時はサポートしてくれる優しいお姉さんが居た。運転席にも乗せて貰ったものである。)、祖父母のいる浜松で下車すると、初孫ということもあったのであろう、祖父母が満面の笑みで迎えてくれたモノである。 特に夏休みは、私は祖父母の広大な家で王様の如く、我儘一杯に過ごしたモノである。 祖父と相撲を取れば、百戦百勝であった。 弟が出来てからは、彼を連れて一緒に言ったモノである。 後年、祖父が亡くなった際に、その家を訪れたのであるが、幼児にとっては広大な敷地及び、家だと思っていたのが”こんなに小さな家だったのか!”と驚きと哀しみを感じた事は、今でも覚えている。 だが、今作でも描かれているように、幼き時に豊かな休みを時間を過ごす事が如何に大切な事なのかを感じるのである。 それは、幼き感受性豊かな子供にとっては貴重な時間だからだと思うからである。 <今作は、そのような幼き子供が夏休みを過ごす中で、微妙に大人同士の関係性や父に対する想いや、自分の幼き弟たちを持つ姿を、絶妙なタッチで描いた作品であると思うのである。>
子ども時代のこと。
ダイナミックでユニークな景色と、少し気だるいリラックスムードのテーマ曲…。 冒頭から明るい。 そしてその印象どおりの映画だった。 ここに出てくるのは、ささいな事に夢中になりこだわりもする、感じやすくも無邪気な、誰でも多少は経験のある子ども時代のこと。 自然。さまざな人たち。暖かい家族の見守り。そんな中で育んできた知恵や愛情や勇気。振り返ってみれば、のん気でのびやかで幸せだった時のこと。 この映画を観て、そいういえば自分も...などと子供時代を思い出し多かれ少なかれ童心に戻り癒やされる人は結構いるのかもしれない。 でも、自分の場合はこんなに恵まれていなかった...という人も中にはいるだろう。 後者にとっては、この作品は、はたして観てよかったと思えるものだろうか?… そんなことを考えてしまうのも、私はこの作品に、所詮は理想像にすぎないでしょ?というちょっとひねくれた?印象もまた持ってしまうから。 …でも、きっと観る価値はあるのだろう。良いものは伝染していくから。 ストンとは受け入れられなくても、少しでも気持ちが洗われたり、なにかを再認識できればそれでよいのだろうな。
19世紀末の自然豊かなプロヴァンスで過ごした穏やかな夏の日の想い出
フランスの長閑な田舎を舞台にしたコメディ映画「わんぱく戦争」「ぐうたらバンザイ!」のイブ・ロベール監督の作品だが、以前のユーモア溢れる作風は影を潜めて、淡々とした大らかな演出が19世紀末の時代を再現する。小学校教師の厳格な父親と若くて美しい母親を尊敬し愛する9歳の少年が過ごした夏の日の出来事。母の妹夫婦と家族同様に触れ合う描写も良く、当時のフランス中流階級の生活感が偲ばれるノスタルジックな作品。夏のバカンスの舞台になるプロヴァンス地方の荒涼としながらも原始的な美しさが残る自然の背景、、その中で寛ぐ家族の生き生きとした表情が羨ましい。想い出の中では美化された記憶が蓄積していくであろうが、それを承知しても、この映画の温もりは失われた人間らしい安らぎの時を刻んでいる。ロベール監督がユーモアの先にある温もりに到達した愛すべき佳作。
ホームビデオ?
映画は主人公マルセルの生い立ちから小学生の頃を描きます、時代は19世紀から20世紀の狭間、フランスのマルセイユ暮らしの教師一家と伯父さん一家が連れ立ってプロバンスの田舎の別荘でバカンスを楽しむ様子を長男のマルセル・パニョールの視点、ナレーションで綴っています。
子供の頃の夏休みの思い出は誰にでもあるでしょう、時代や生まれも違うので当時のフランスの人々ほど共感できない面は否めませんね、それにしてもこの映画、異様なほど平板です。
幸いにも事件らしい不穏なことは起こらず只管、愛情に満ちた家族のスケッチが続きます、微笑ましいものの、まるでマルセル一家のホームビデオを見せられているようで違和感を抱きましたが作者のプロフィールを知って氷解しました。
映画では描かれませんが母のオーガスティンは36才の若さで感染症で亡くなっていますから母と過ごした日々は忘れがたい宝物だったのでしょう。今思えば母が手酌で泉の水を飲むシーンで一瞬、躊躇したような演出や洞窟での細菌の話など暗喩だったのかもしれません。
マルセル自身、執筆前に2才の娘を亡くして失意の底にありました、自伝的小説を書き始めたのは幸せの光に満ちていた少年時代に戻りたかったのでしょう。平凡な一家の幸せ物語の裏に秘められた悲話、作者の心を思えば平板なことに執着した真意が理解できたような気がします・・。
夏休み
123本目。 ショックウェーブ観ようと思ったら、ほぼ満席。 そんな訳で恵比寿へ。 行って気付いたリマスターかっ。 新作かとばかり思ってた勉強不足。 でも画の質感とかが懐かしく感じ、またストーリーも相まって何かワクワク。 童心に帰ったかの様。 ああ戻りたい。
少年目線で語られる夏の思い出
いやーなんて平和な話なんだ。ここに描かれるのは少年の日常の風景。特に大きな事件は起きないけどずっと見守れれる。雰囲気は赤毛のアンとか、ハイジみたいな。 . マルセルにとってパパは世界で1番尊敬してる人間で、パパの威厳が傷つくことを嫌がる。だから狩猟の時パパが獲物を取れるようにアシストしたり、なんて良い息子なんだ!. . 時代を感じたのは、叔母さんが妊娠したとき29歳でだいぶ高齢出産だねって言われてたこと。今なら29歳なんて適齢期だし、もっと歳いってから産んでる人なんて星の数ほどいるし(笑).
南仏ノスタルジーな風
プロヴァンスで夏のバカンスなんて日本人にとっては憧れの響きだ。 9才のマルセルは教師である父と美しい母と弟と4人で慎ましやかに暮らす。 叔母の家族と共に、大らかな光が溢れる南仏の自然の中でひと夏過ごした。 子供ならではの瑞々しい目線に沿って、ストーリーは進む。 マルセルが大人になって昔の思い出を振り返る設定なので セピア色の古びた映像が、どこかノスタルジーな感覚を引き出している。 なので、子供時代の感受性がよみがえり あの懐かしい日々を疑似体験させてくれる。 子供の頃、両親が連れて行ってくれた千葉の海水浴場。 大嫌いな苦い海水や、刺身の美味しい民宿。歩いて買いにいったアイス。 捕まえた魚を海水ごとポリバケツに入れて 家に持って帰りたいと無理をいったこと。 子供のとき自分は何を考えていたか どんなに親は自分を大切にしてくれたか・・・ この作品には、そんなことを思い返させる力がある。 決して派手な出来事はないんだけれど 日常を静かに描いたステキな映画です。
豊かな少年時代
総合:75点 ストーリー: 70 キャスト: 70 演出: 75 ビジュアル: 75 音楽: 75 幸せな少年時代の何気ない日常を、19世紀末の南仏ののどかな美しい自然を背景に愛情を込めて描かれる。後に小説家となった彼自身が、大人になって振り返る形で挿入される解説入りの場面の演出がうまい。少年の目線からの家族模様と彼をとりまく世界は決して物質的に豊かなわけではないが、これ以上望むものは特にないくらい豊かで新鮮な驚きと冒険に満ちている。 よくある主題ではあるのだが、演出のうまさでなかなか面白い作品になった。のどかでのんびり流れる音楽と合わせて、見ているほうも少年の気持ちになる。また彼を見守る家族の深い愛情が感じられる。この時代の社会もわかって興味深い。
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