「テストステロン大爆発、ロサンゼルスはもうめちゃくちゃ💀 スター不在という逆境をテンションで乗り切った、執念の第2ラウンド。」プレデター2 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
テストステロン大爆発、ロサンゼルスはもうめちゃくちゃ💀 スター不在という逆境をテンションで乗り切った、執念の第2ラウンド。
宇宙から飛来した狩人「プレデター」の恐怖を描くSFアクションホラー、『プレデター』シリーズの第2作。
前作から10年。1997年のロサンゼルスでは、警察とジャマイカ系ブードゥーギャング、そしてコロンビア系麻薬カルテルが三つ巴の戦争状態にあった。
熱波が押し寄せる中、銃撃戦を繰り広げるLA市警とギャングたち。しかし、その最中ギャングたちが何者かに惨殺される。不審に思ったハリガン警部補は、上司が止めるのも聞かず、仲間たちと共に事件の真相を探り始めるのだが…。
ジェイソンしかりフレディしかりエイリアンしかり、ホラーモンスター映画というのは味がしなくなるまですり潰すというのが世の常でして、当然プレデターくんにも続編が用意されます。
…が、ここでひとつ問題が。ギャラの問題で前作の主役アーノルド・シュワルツェネッガーが出演を拒否してしまうのです。80年代末から90年代初頭のシュワちゃんはまさに破竹の勢い。本作が公開されたのは彼がスターダムを駆け上っているまさにその最中であった訳で、そりゃあ要求する額も『1』(1987)の時とは全然違ったのでしょう。大人って汚いっ!
プレデターくんのインパクトは確かに絶大なのですが、前作はそれと同じくらい、いやあるいはそれ以上にアーノルド・シュワルツェネッガーという俳優の圧が画面を支配していた。途中まで主人公である事が隠されていた『エイリアン』(1979)のシガニー・ウィーバーとは根本的に扱いが違うのです。
この映画は、はっきり言ってジャンルとしては『エイリアン』よりも『キングコング対ゴジラ』(1962)に近い。2大怪獣の激突のがうま味だったのに、その内の1匹が降りちゃったらもう成立しなくない?そんな続編に意味ある?
…などと思っていたのだが、ところがどっこい『2』には『2』独自のうま味が出ており、ちゃんとしっかり面白い!
シュワに変わって主役を務めるのは『リーサル・ウェポン』シリーズ(1987-)でお馴染み、ダニー・グローヴァー。どちらのシリーズもジョエル・シルバーが製作を務めており、また『リーサル・ウェポン』の原作者シェーン・ブラックは『プレデター』に俳優として出演している。この2つのシリーズは馴染みが深く、だからこそのこのキャスティングだった訳ですね。…という事は、メル・ギブソンが主演を務めるという選択肢もあったのかしら?
このダニー・グローヴァー、LA市警の鬼刑事を演じるのにはピッタリな厳つさはあるものの、正直なところシュワちゃんほどの華は無い。どっちかといえば脇で輝くタイプである。
しかし、そんな全くヒーロー然としていない中年男が汗を垂れ流しながらなんとか急場を凌ぐ姿が観客の共感を呼ぶ。まるで『ダイ・ハード』(1988)のジョン・マクレーンの様な頑張るオヤジの泥臭さこそが、シュワちゃんにはないチャーミングな部分だと言えるでしょう。…そういえば『ダイ・ハード』もジョエル・シルバーの作品じゃん。という事はやはりマリガン警部補の造詣は意図的にマクレーンに近づけたのでしょうね。
スター不在をカバーするかの様な異常なテンションも本作の魅力。特に前半30分はシャブでもやってんのかってほどにブッ飛ばしまくっており、普通の映画ならクライマックスで行う様な麻薬カルテルとの一大バトルが映画のど頭で展開されるのだから恐れいる。野次馬根性丸出しのマスコミ連中もうるさいし銃撃戦が終わった後のLA署内も喧しいし、カルテルのボスとその情婦とのベッドシーンすらも大変に騒々しい。
テストステロンの濃度が高すぎて咽せるわこんなん。…だがそれが良いっ!!
ただ、その30分を過ぎるとテンションが一旦落ち着いてしまう。謎の殺戮者の正体に刑事が迫るというミステリー要素は前作にはなかった新たな試みで、やたらと煙いLAの街並みも相まって『ブレードランナー』(1982)を観ているかの様なスリルはあるものの、観客としては犯人の正体は既にわかっている訳だから、「そんなまどろっこしい事すっ飛ばしてサッサと戦えよっ!」という気持ちが湧いてこないでもない。
また、せっかく警察/麻薬カルテル/ブードゥーカルトが三すくみでバチバチやっているのに、その対立構造がストーリーの盛り上げに役立っていないのは何とも勿体無い。カルト軍団のボスvsプレデターのとことか結構面白かったし、もっと3つの勢力が協力したり反目したりしながら共通の敵に立ち向かう展開があれば、冒頭の様なテストステロン過剰なテンションを維持出来たのかも知れない。
脚本の杜撰さ(唐突な女刑事の妊娠や噛ませ犬すぎる特殊部隊など)は気になるが、ハリガンが泥と汗の臭いを撒き散らしながらプレデターとの死闘に臨む後半は悪くない。
必死こいてプレデターを斃したと思ったらまさかの…という展開には素直に「あっ終わった…」と絶望させてもらったし、その後のいらな過ぎるリザルトボーナスには笑かしてもらったし、中弛みはあったものの十分に満足できる続編であったと思う。
興行収入は『1』の9,800万ドルから大きくダウン、5,700万ドルという微妙な結果に終わってしまった。これは作品の出来が悪かったというよりは、シュワちゃんが出演しなかったことが原因だと見るべきだろう。
スター不在の余波により失敗作のレッテルを貼られた本作。物語上では「まだ次がある…」と息巻いていたものの、シリーズはここで一旦終了してしまう。しかし、世の中何が起こるかわからないもの。『エイリアン2』(1986)にも参加したSFXアーティスト、スタン・ウィンストンが遊び心で配置した“エイリアンの頭骨“がシリーズ復活への呼び水となるのだった…。
※平田勝茂による吹き替え翻訳。出演声優は内海賢二、戸田恵子、大塚芳忠、大塚明夫、玄田哲章、江原正士など…。
あーもう素晴らしいっ✨これぞ職人の仕事ってやつですな。この時代の吹き替えは最高やっ!!
すけあくろうさん、コメントありがとうございます♪
あのラスト、プレデターのキャラクター像が深掘りされていて感心したのと同時に、200年くらい前の銃を貰って「いや、要らんけど…」みたいになってるダニー・グローヴァーの姿に笑ってしまいました😆