ブレージングサドルのレビュー・感想・評価
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無差別的差別
あらゆるセンシティビティに対して分け隔てなくストレートな悪意をぶつけまくる悪趣味映画。黒人、白人、ユダヤ人、娼婦、知恵遅れ、カウボーイ、オカマ、ナチス、KKK、ハリウッド…カメラに映り込んでしまったものは何であれコメディの対象と化してしまう。
差別性の徹底的漂白へと直行する昨今のハリウッドとは対極的な、いや、徹底性という点においてはむしろ同類の熱量を孕んだ作品といえる。あらゆる概念の差異を消し去ることが差別の解消につながるとすれば、漂白と同様に、真っ黒に塗り潰すこともまた一つの有効な手段なんじゃないかという。まあ、やりすぎであることに変わりはないし、そもそもこの監督はそんなことはちっとも考えていないだろうけど。
アメリカ文化に通暁していないと理解不能の箇所も多いため、コメディ映画として完璧に楽しめたかといえば首肯し難い。しかしラストで主人公が馬から真っ黒な高級車に乗り換えてどこかへと走り去っていくシーンはかなりよかった。いくら無茶苦茶やっても最後にキッチリ落とし前はつけるあたりがニクい。コメディ映画というのは最も監督の知性と感性が問われるジャンルだな、と改めて思った。
日本人には無理
この映画アメリカ人には、かなりの名作コメディということになってます。
①様々な西部劇のパロディが満載なので、アメリカ人でもかなりの西部劇通じゃないとわかりません。江戸時代の戯作みたようなもんです。
②アメリカ人の大好きな、キートンとかマルクス兄弟みたような、いわゆるスラップスティックなので、普通の日本人の感性では、初めて吉本新喜劇をご覧になる東京の人の百倍難しいです。
まあ、単にドタバタとして観るならそこそこですけど
繰り出す禁じ手、雨あられ
そりゃーカウボーイも豆ばっかり食べてりゃオナラも出るのは道理だがゲップに続いて17連発も奏でた映画は史上初だろう。老婆にボディーブローしたり馬をパンチで倒したり神父を叩いたり知恵おくれの青年をからかったり、タブーと言うタブーを打ちこわし黒人差別ばかりかインディアンからアイリッシュまでいじり倒し女性蔑視どころか見世物扱い、デートリッヒもどきの歌手を仕込んでおいてその歌声のひどいこと、町民はダイナマイトで死んだはずなのに皆んなぴんぴん、秀吉もどきの一夜城、プロットなんて有って無いのも同じ、いちおう往年の「真昼の決闘」もどきだが流石に悪ふざけも行き詰まったのかクライマックス途中で職場放棄(子供がお絵かきに失敗してクレヨンでぐちゃぐちゃに塗りたくる衝動に近い感じ)、この映画はスタジオ・ツワーのアトラクションだったのかと予想外の展開にいたっては空いた口が塞がらない・・。
あのティム・バートン監督でさえ功なり名を遂げてからのご褒美で「マーズ・アタック」を一本撮らせてもらっただけなのにメルブルックス監督はなんと恵まれていることか、これほどの正面切っての悪ふざけ博覧会が映画として成立してしまったことに驚きを禁じ得ない、やられました。
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