フル・モンティのレビュー・感想・評価
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どうしたって苦笑、失笑、爆笑が沸き起こる派手さのないヒューマンコメディ
ロバート・カーライルが主人公のガズに扮しており、「トレインスポッティング」ファンだったこともあり、公開後しばらくしてから劇場で鑑賞。あの頃、こういう決して派手さのない作品でも、劇場にはそこそこ人が集っていた。そして、そこかしこから苦笑、失笑、爆笑の声が聞こえてきたものだ。
イギリス北部の街シェフィールドが舞台。かつて鉄鋼業で栄えていたけれど、いまは不況の影響で失業者であふれかえっていた。ガズも養育費すら払えず、別れた妻に息子を奪われそうになっていた。そうこうしているうちに、男性ストリップショーに熱狂する女性たちの姿を目撃した男たちは、自分たちもストリップで一儲けしようと思い立ち、寄せ集めのメンバーが猛特訓を開始する。
こういってはなんだが、失業した中年の男たちがストリップに挑む姿は滑稽そのもの。その必死さが観る者に笑いを誘い、果ては胸アツな感情を呼び起こすにまで至る。それは、どこまでも役者たちの演技力による賜物といえよう。
とても愛おしい
人生ってお金が必要。
でも、なんの技術もない。そもそも職がない。
どうする?脱いじゃう?!
中年の男達がお尻を丸出し、腰を振ってパフォーマンス。
最初はとまどいながらも、懸命に本番を目指す姿に笑ってしまう。その潔さになぜか哀愁も感じる。
ストーリーは単純だが、気楽に楽しめる。
暖かな目で見守る息子の存在がとても微笑ましい。
ようやく見た
公開当時、同僚にお勧めされたが、なんとなく縁がなく20年以上越しでようやく視聴。内容は絶賛とは言えないが、今見てもまぁまぁの良作。あまりに過度な展開がないので、ひょっとして実話ベース?と思ったがそうではなさそう。
自分史として、こんなに泣いた映画はないかも
〈自分の“日記”なのでコメントは閉じています〉。
この映画で笑えるんだろうか?
若い人なら笑えるんだろうなあ。
この映画は、大学生だった我が息子から
「面白いよ」「ギャグ映画だよ」としてサジェストされたんですが、ちょっと面喰らうほどのジェネレーションギャップ。そして大人たちが負っている痛みへの感度の違いに、息子がなんだか遠くなってしまった推薦の辞でした。
まあ、仕方ないね。
親と子とはこんなものだ。
生きている場、責任、トポスが違う。
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斜陽の国 イギリスで
炭坑町も、鉄鋼の町も傾いていく。
この映画「フルモンティ」は、
「リトル・ダンサー」
「我が谷は緑なりき」
「ブラス!」
「フラガール」
などと並んで、不況と解雇の大波に押し潰されそうになりながら、ただただ我が子の幸せのために、自分が犠牲(ピエロ)になってやろうじゃないかと足掻いた親たちの、涙の一本だ。
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10年ほど前のことだが、
僕の勤める会社では 創立以来初めてのリストラがあった。
取引先は支払い額を3割下げ、消費税と燃料代は非情にも上がり続け、僕の手取りも3割減った。
リストラが始まり、
「なんとか自分が生き残れるために必死だった」し、
恥ずかしいけれど正直に告白すれば「誰かがへまをして僕の代わりに首になってくれること」を僕は祈っていた。
(「シンドラーのリスト」だったか、「ライフイズビューティフル」であったか、“ガス室の死の選別”を逃れるために、女たちは指先を切り、頬に血を塗って“血色良さそうに”運動場を走り回っていたよね。転べば終わりなのだ。よろめく姿を見られたら終了なのだ。
ガス室なのだ。
ー あの絶体絶命のシーンを当時仕事をしながら思い出していた。
黒い手帳を開いた監査役がずっとこちらを見ている。
冗談ではなく必死だった )。
失業できない理由が僕にはいくつかあった。
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中略
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・・だから僕は何があっても失業してはいけない。
そんな綱渡りの時期の、背水の陣での、リストラのさなかに観た映画がこの「フル・モンティ」だったのだ。
気を抜くと切迫感で膝がガクガク震え出し、責任の重さでどうにかなりそうだった。
寝ないで働いたから、体を壊して通院しながらの金策だった。
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劇中、
男たちは弱いよね。
⇒自尊心と責任感があったぶんだけ、逆境と自分の不甲斐なさに亭主たちは苦しみうめいている。
妻や子供を守り切れなかった「プライドも甲斐性もズタズタ」の駄目男たちの姿だ。
女たちはその男たちの弱さをよーく知っている。
それゆえ、それだからこそ、
「その街に、そしてそれぞれの家庭に、忍び寄る失業の不安の影を (ともすれば不安に押し潰されて叫びながら逃げ出してしまいたくなるようなその心細さを) みんなでストリップでもやって大声で笑い飛ばしてやろうや!」
と言うのだ。女たちは。
あのステージ。
女たちのはしたないほどの腹の底からの笑い声と、それに応えた全裸の男どものステージに、
僕ははからずも、胸迫って、ひとりアパートで声を抑え切れずに泣いてしまった夜だった。
切羽詰まった弱い男たちを、素っ裸にしてやって、自殺や失踪から救ってくれるのは、これは逆説的だけれど、気持ち相容れずにいてくれる (男から見れば無神経で図太くて心通わない)、そんな女たちの腹の底からの大笑いなのかもしれない。
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中略
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「若い頃の苦労は買ってでもしろ」と言うけれど、たとえ世間知らずで終わったとしても、大人たちが体験した辛過ぎる苦労の日々は、我が子には味わわずにいてもらいたい。
「フル・モンティは面白いギャグ映画だ」とずっとあいつには言っててもらいたいと僕は思う。
これはおもしろい
男のストリップの話と聞いて、気持ち悪いと思ったら凄く面白くてオスカー候補にふさわしいと思いました。
6人のキャラをはっきり分けて、それぞれの背景も手際よく描かれていています。
リーダーの息子は結局父親の横を離れないところもいいし、ラストなんか結構感動してなきそうになりました。
笑いたいオトナ女子にオススメ
不景気に喘ぐ地方都市で失業中の男達が企む一攫千金の企画。
馬鹿にされたり、自分で気にしたり、色々な障害を乗り越えて舞台へ。
個性的なおっさん達のアオハルぶりがとてもコミカルに描かれていて楽しかった!
男を描いてこそのイギリス映画の最後の誇りをコメディにした強かな作品
失業した男達が一獲千金を夢見て男性ストリップの興行を決行するコメディ。男のメンツで仕事を選んでいながら、けして肉体美を自慢できる容姿を持ち合わせていない男達がストリッパーの訓練をする絵面で一本の映画に作り上げた潔いイギリス映画。どんな逆境において転んでもただでは起きない男の沽券にかかわる究極の選択が可笑しい。我関せずの子供たちとの距離感もあり、妻子を養えない男の哀れさは深刻に描かれていない。女性を大切に描くフランス映画に対して、男性が威張ってるイギリス映画の裸一貫の最終兵器と言ったところだろうか。近年のフランス映画、イタリア映画の不振を横目にイギリス映画、頑張ってます。
1999年 3月6日
稼ぎたきゃ脱げ!
『ブラス!』では炭鉱の町だったが、これは鉄鋼の町。同じく失業者だらけの厳しい現実が映し出される。そして町のブラスバンド。これがイギリスなんだなぁ~と悲しくもなる。
ダメなオヤジたちがストリップする計画。『フラッシュダンス』のビデオで研究したり、黒人のでかさに驚いたり、真面目に取り組んでいるせいでますます悲哀を感じてしまう。止めてしまいたくなる心理描写も見事だし、失業者たちの細かな描写がやっぱりいい。
希望+勇気=フルチン
顔で笑って心で泣いて、みたいな人生って長く生きてれば誰でも実感。
その行動がなんであれ、笑いと元気を振りまく姿は勇者そのもの!
ありがとう! と言いたくなる作品。
何も考えず笑えるイギリスコメディ
イギリスのコメディはブラック過ぎて笑って良いのかわからないものがあるが、本作は単純に見て笑えるコメディ。
90分という短い時間の中でも登場人物のキャラクターの人物像が上手く描かれていて、みんな良い味を出している。
すっぽんぽん!
思い出しレビュー14本目。
『フル・モンティ』。
愛すべきイギリスの1997年のコメディ。
イギリス・シェフィールド。不況で鉄工所を解雇された6人の男たち。
その一人、ガズは、町の女たちが男性ストリップショーに熱狂してるのを見て、自分たちもストリップショーをして一攫千金を得ようと思い付く…!
日本の『ウォーターボーイズ』もそうだけど、ヘタすりゃおバカコメディになりかねない題材。
それを、コメディではあるけど、非常に胸のすく快作ドラマに仕上げている点が見事。
その根底に、不況、解雇、就職難など、労働者階級の悲哀が巧みに据えられている。
去年『わたしは、ダニエル・ブレイク』を見た時もひしひしと感じた。
労働者の現状は、今も20年も、日本だろうとイギリスだろうと変わってない。世の中、どうしてもっと働き易くならない?
ストリップをする6人は、ロバート・カーライルのようなハンサムもいれば、トム・ウィルキンソンのような初老やマーク・アディのようなぽっちゃりちゃんも。
6人、問題も悩みもそれぞれ抱え…。
だからこそ、やらなければならない。
やればきっと、何かが変わる。
夜な夜な工場で練習中警察に見付かって裸で逃げようとも、次第に町の噂になろうとも、俺たちには失うものは無い。
直前になって及び腰になっても、さあ、脱ぐ時が来た。
俺たちの全てを見よ。
いざ、ショーへ。
すっぽんぽん!
シェフィールドの衰退が支配するコメディ
シェフィールドの栄枯を物語る寒々しい街並みと景色がとても印象に残ります。
何とか一山当てようとするダメ親父ガズの奮闘を描くコメディ。
コメディに奥深さとか求めるのは野暮でしょう。しかし、全体を通して舞台シェフィールドの衰退が色濃く存在していて、そこに生きる人々の中に儚さな様なものを感じてしまう。だからこそ、もう少し「その後」まで映して欲しかったです。
このスタイルの元祖的作品
うだつの上がらない男たちが一念発起して何かに挑戦するというプロットのさきがけといって良いだろう。どうしても後発の作品に比べてインパクトが弱いという印象だが、終わり方は一番潔くてよかった。しかしロバート・カーライルはこういう役をやらせたら似合うね。あと定石通り綺麗所のヒロインを置くことをせずに子供を登場させたのはうまい。
諦めず奮闘する普通の中年たちの哀歌
総合:65点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 75
ビジュアル: 70
音楽: 70
こんな情けないことやって、と見下したり笑いものにしたりするのは簡単だ。特別踊りが上手いわけでもなく美男子が揃っているわけでもない。実際、彼らは町の人に嘲笑の対象にされたりもする。しかし失業の深刻な町において家族のため自分のために自分の努力で奮闘する男たちは立派なものだ。諦めたらそこでお終い、だが動き出せば何とか状況が変わることもある。途中で挫けそうになったり最後まで自信が持てなかったり、等身大の庶民な彼らが上手に描かれていて、演技と演出は好感が持てる。しかし全体的には喜劇調で深刻な雰囲気ではないのだが、何か彼らの醸し出す人生の物悲しさも感じてしまってちょっと辛い。なんとか成功して幸せになって欲しいと思った。
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