「ベトナムでの戦争を(心理的に)体験する」プラトーン akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
ベトナムでの戦争を(心理的に)体験する
できれば劇場で体感すべき種類の映画だ。
すごく昔に、ビデオで多分観ていてなんとなく筋はわかっていたものの、主人公たちにほとんど共感できていなかった。そもそも戦争そのものが当時の私には理解できてなかったのだと思う。
だからこそ今、自分のために筋を書いておこうと思う。オリバーストーンが生還したからこそ可能になった戦争というものの真実を。
映画は、軍用機で戦地に降り立つところから始まる。リクルート場面や訓練などは一切ない。
大学を中退して、軍に志願したという世間知らずだがめちゃくちゃ志だけは高い若者。前線に送られることがどんなことなのか知らないのだ。
まず体力が勝負。毎日何キロもジャングルの中を重い荷物を背負って歩かされる。寝る時も敵の襲撃に備えなければならない。雨の中、手榴弾や武器を手元に置きながら。さらには、ヘビやアリ、ヒルなどが体にまとわりつく。自然のなかにいるのだから。筋肉痛くらいでヒイヒイいっている平和な場所で暮らすこととは、生きるレベルがまったく違う。
だが、主人公は、自分で志願したので、泣き言は言えない。(だが心の声は、ずっと祖母に手紙を書き綴っている。)
徒歩移動している時は、地面で直接寝るわけだ。交代で寝るので、三、四時間の仮眠だ。
日本には徴兵制がないので、自衛隊にはいらないかぎり、なかなか戦争の真実はわからない。
自衛隊募集の際には大変なことなどあまり言わないだろう。若く、そして体力があり、知力も必要不可欠である。
この映画では、トム・ベレンジャーとウィレム・デフォーの二人のベテラン軍曹が。この新兵からどう見えるかを描く。周りには一年目の新兵が多いようだが、彼らももちろん先輩だ。黒人や学のない白人たち。さまざまな人種。
でも、軍隊に行って兵卒になるしかない彼らが21世紀の現在、ドナルド・トランプを大統領にしたとも言えるので、この映画は必見なのかもしれない。
アメリカの人口の多くの構成は、彼らと同等なのではないかと思う。富裕層知識層などは一部なのだから。ちなみにオリバーストーン自身は、ユダヤ人の株仲買人を父にもつハーフのユダヤ人なのだそうだ。(映画では描かれない)。だからこの映画自体、奇跡の作品とも言える。
どこまでが実体験かまではわからないが、脚本がよくできている。そして演出の手腕も確かである。予算もついている。
チャーリー・シーン、トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォー、フォレスト・ウィテカー、ジョニー・デップが戦場をリアルにしている。
ジャングル中の移動や、ゲリラのアジトの村を発見した場面、塹壕、背中に背負う小型電話(1967年には軍ではもうそういうものがあったんだ)全てがよくできていて、兵士たちもリアルなので、フィクションとどこかで思いつつも、体験してしまった。
エリアスとバーンズ。映画の本筋が実話かどうかはわからないが(多分実話ではないと思うが)、バーンズを撃ち殺すとき、エリアスの復讐をしている自分をみた(劇中の説明では、仲間の兵士を私情で殺した場合、軍法会議にかけられ懲役10年だとか)。
脚本が上手い。名作たる由縁でもあると思う。
ちなみにオリバーストーンはこの一作だけではなく、「七月四日に生まれて」「天と地」というベトナム三部作を撮っている。すべて一度は見ているはずなのだが、内容はすっかり忘れている。
頑張って見直したい。トムクルーズのは、戦場で負傷して下半身麻痺になった話、天と地は、ベトナム人の妻と、アメリカ人の夫の数十年に渡る夫婦の話だったか。ぜんぜん覚えてないのが悔しい。