「戦場の事実を突きつけ、観るものを圧倒する。」プラトーン Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
戦場の事実を突きつけ、観るものを圧倒する。
本作は戦争映画の姿を借りた反戦(厭戦)映画だ。
戦場で起きた事実を突きつけられ、観るものを圧倒する名作だ。
主な登場人物は3人。
クリス・テイラー(チャーリー・シーン)
ボブ・バーンズ2等軍曹(トム・ベレンジャー)
ゴードン・エリアス3等軍曹(ウィレム・デフォー)
本作で1986年アカデミー監督賞を獲得した監督のオリバー・ストーンは、
”LRRP(長距離偵察部隊Long Range Reconnaisance Patrol)”
と通称される特殊偵察部隊の一員としてベトナム戦争に従軍した。
のちにレンジャー連隊に組み込まれることになる選りすぐりの部隊だ。
ベトナム帰還後は麻薬に溺れ、複数の逮捕歴もある。
オリバー・ストーン監督自身が、戦争の加害者であり被害者だ。
オリバー・ストーンが映画に残した数々の功績を見ると、
「よくぞ映画人として再生してくれた!」
と心から賞賛したい。
ベトナム戦争の側面として、
◆アメリカ軍将校や下士官において、味方から襲撃された戦死傷の多さ
◆有色人種兵の酷使と戦死傷率の高さ
◆麻薬の蔓延
◆民間人の大量虐殺やレイプ、略奪行為
◆ナパーム弾・枯葉剤など非人道的な武器の使用
アメリカの評価は国内外で地に堕ちてしまい、
反米容共の機運だけが高まった。
アメリカにとって、本当に「無慈悲、無意味、無価値」な戦いだった。
本作で、オリバー・ストーンは、
アメリカ軍のある新兵から見た二人の下士官という視点で、
戦場の日常や戦闘を描くことのみに徹した。
そして、戦争の「無慈悲、無意味、無価値」を表現しきった。
オリバー・ストーンの
戦争に対する怨念、恐怖、諦観
人間に対する軽蔑、憐れみ、同情
が画面から汲み取れる。
若かりし私は、本作が劇場公開されたあと、
オールナイトで続けて見たことを思い出す。
その頃は、単に迫真の戦争映画として見て、そして大興奮できていたのだから我ながらおめでたい(笑)。
※まったく余談だが、
オリバー・ストーンと同じ部隊にいた、
というアメリカ人と食事したことがある。
彼もビジネスの世界に復帰するまで、布教活動に没頭していたという。
戦争がのこす心の傷は、想像できないほどだ。