「「冬の旅」の、タイトル通り、主人公の少女モネが冬にテント生活をしな...」冬の旅 imymayさんの映画レビュー(感想・評価)
「冬の旅」の、タイトル通り、主人公の少女モネが冬にテント生活をしな...
「冬の旅」の、タイトル通り、主人公の少女モネが冬にテント生活をしながら旅をするおはなし。
原題をそのまま訳すと「家もなく、法もなく」らしい。たしかに、序盤は、モネは家もなく、法にも縛られず自由に生きているように描かれる。
だけれど、どんどん行き詰まって、最後は死んでしまう。モネは家がない代わりに、法に縛られず自由に生きていたはずだった。
死んだあとには、国家の象徴ともいえる警察が彼女の身体を引き取りにくる。旅先で出会った人たちが、それぞれ優位な視点で彼女のことを証言する。ここには、モネの自由など、存在しない。
モネ自身の視点が抜け落ちた「証言」によって、この映画(彼女が死ぬまでにたどった記録)は構成される。警察が気にしているのは、事件性があるのか、ないのか、だけであり、それを判断するための記録を取ることが目的であろう。彼女はなぜ死ぬほどの過酷な旅をしたのか、彼女の心情、ホームレスが増えていく社会背景などは抜け落ちてしまう、
当事者の証言は欠落していて、他人の言葉のみで再構成される「モネが死ぬまでの旅の記録」はどこまで事実が担保されるのだろうか。事実の記録のようでいて、実はそこに真実はなにもないのかもしれないということを思ったりする。
モネはいろいろなところを旅しているように見えるのだけれど、過去に出会った人たちと、ニアミスする場面が多く描かれるから、遠くまで移動しているようで、実は、近くをぐるぐるしているだけなのかもしれない。どこにでも行ける自由さがあるようで、どこにも行けない閉塞感を孕んでいる。それはきっと、物理的な移動のことだけではない。閉塞感のある社会、そこで生きづらさを感じている人間たち、のことも含めて表現されているような気がしている、