劇場公開日 1987年10月31日

「さすがのアーサー・ペンも、原作・脚本に無理があっては…」冬の嵐 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 さすがのアーサー・ペンも、原作・脚本に無理があっては…

2025年8月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

少し前に、「奇跡の人」の再鑑賞で、
演出の上手さに感動したところ、
同監督によるこの作品を観ていたことを
思い出しての再鑑賞。

38年前の劇場鑑賞では、この作品の監督が、
「俺たちに明日はない」や「奇跡の人」の
アーサー・ペンとの認識すら多分なく
鑑賞していたような気がするし、
それだけに何故この映画を
かつて選択鑑賞していたのか、また、
何故、メアリー・スティーンバージェンが
3役をこなしていたのかも
今となっては思い出すことが出来ないまま
に観ることに。

さて、38年ぶりに再鑑賞して、
なるほどねぇ、
らしい雰囲気の導入部に加え、
冒頭で薬指を切断される女性の事件と
女優がプロデューサーと称する男の屋敷に
来たこととの関係は?等々、
サスペンスそのものの謎解き展開に
魅了されたものの、
一方で、設定の無理やり感と共に、
社会的メッセージ性の薄いこの作品は
特にアーサー・ペン監督でなくとも、
と言ったような違和感もあった。

博士らが、妹からの情報を元に、
姉をゆする手段として、後々の展開からは、
スティーンバーゲンが3役をやったように、
相当に似ている必要があるにも関わらず、
オーディションでそっくりさんを探すという
不自然さ。
また、精神科医と、
食事や裁縫などの日常の全てや、
時には犯罪の実行役を行う使用人の生活の
異様さが没入感を阻害するばかりで、
原作・脚本に無理があるように思われた。
せっかくの導入部の映像や、
ヒロインが巻き込まれた理由の謎解きに
サスペンスらしい見事な雰囲気を
醸し出していながら、
基礎的なストーリーの甘さが
残念な結果に繋がったような作品に思えた。

KENZO一級建築士事務所