プッシャー(1996)のレビュー・感想・評価
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いい奴すぎたフランクの悲劇
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近年の作品ではドギツイ色使いが印象的なニコラス・ウィンディング・レフン監督のデビュー作で、色使いはまだ穏やかだが、このあとの作品である「ブリーダー」や「ドライヴ」に通ずるレフンらしさはどことなく感じた。
いくつかレビューを見るに不評そうだが、インドとイギリスでそれぞれリメイクされていることからも分かるように、この脚本はよく出来ているのである。
つまんない脚本をリメイクする酔狂はいない。つまり面白いのだ。
主人公フランクはおかしな奴だと周りから言われている。密売人をやっているフランクの周りなのだからロクデナシどもにだ。
フランクのどこがおかしいかというと、フランクがいい奴だからなのだ。
金を取り立てにいって、少しクスリをくれと懇願され少しくらいあげたらいいなどと言う。ツケも払えない男が今のクスリ代なんか持ってるわけないのに。
そもそも取り立てにいく先がいくつもあり、その金額もまぁまぁデカいのだが、フランクが払えるあてのないツケでクスリを渡していたことを意味する。
つまり、密売人としては良心的すぎる男だったのだ。
そんなフランクが、裏切られ、見捨てられ、カモられる。
どいつもこいつもフランクを喰い物にしようとむらがる。
前半にフランクは逮捕されるのだが、そこで義理を通して口を割らなかったことなど、周りの者から見たら「お前はアホなのか?」なのである。
いい奴とはいっても、フランク自身も密売人をしているロクデナシなので同情しにくいが、ライオンとハイエナしかいない檻の中で生きるにはいい奴すぎたフランクの悲劇の物語なのだ。
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