「『セイウチと大工』」ふしぎの国のアリス 月野沙漠さんの映画レビュー(感想・評価)
『セイウチと大工』
『セイウチと大工』というエピソードが頭に残っていて、なぜ残っていたかというとなんかの書評でセイウチは牙があるからヒンズー教の神の、大工は父が大工だったキリストの比喩で、騙されて連れ出され最後に食べられてしまう牡蠣の子たちは宗教に食い物にされる信者たちの比喩だというのを読んだことがあって、なるほど怖いエピソードだなと思って印象に残っていたのです。実際はルイス・キャロルは挿絵のイラストレーターにセイウチのコンビの相手を大工、蝶々、准男爵の内から選ばせて描かせたそうだから韻を踏むのに都合が良ければ特にこだわりは無かったようですねwしかし、宗教と信者の例えは妙に説得力があって残酷なエピソードとして頭に残りました。最近、香港やBLMでデモや暴徒を煽る社会活動家や言論人を見て、ああ、このエピソードそのものじゃないかと思い出す機会が多かったのです。
しかし、この『セイウチと大工』、何の話にでてくるエピソードか思い出せない。それでググって鏡の国のアリスに出てくるエピソードだと知る。なんか意外、聖書のエピソードかななんてぼんやり思っていたwよく考えたらこんな宗教を否定するようなエピソード入れるわけ無いかw
そしてこの『セイウチと大工』は鏡の国のアリスのエピソードなのにふしぎの国のアリスである本作に挿入されているということは、本作は『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』を併せて創作したものなんですね。本作と不思議の国のアリスの原作はかなり昔に鑑賞も読書もしていたのですが、その違いには気づかなかったw
正直なところ本作は、あまりにもハチャメチャに話が展開していき、その展開に対するアリスの反応も薄いというか共感できないもので、あの順応性は何でも不思議なものを受け入れられる幼児期のものでしょう。本作のアリスの年齢設定は喋り方や体格などから幼児とは言えない、10歳は超えている感じでしょうか?というわけで主人公に共感できず、この不思議な世界にも入り込めず、映画に集中できなかったというのが正直なところ。子供の頃に見ていたら違う感想だったのかな?