「娯楽作品としては素晴らしいものだが。」フォレスト・ガンプ 一期一会 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
娯楽作品としては素晴らしいものだが。
本作を鑑賞した当時は御多分に漏れず副題の「一期一会」の文言に惑わされ、感動巨編と受け止めていた。
主人公のガンプは知的障害がありながらもただ純粋に物事に突き進む青年、かたや幼馴染のジェニーはアメリカが抱える闇を一身に背負って身を滅ぼしてゆくという、アメリカの光と闇を描いた作品だと思っていた。
確かに光と闇を描いた作品ではあったが、監督であるゼメキスの本音が映画評論家町山氏によって暴露される。
ガンプはアメリカの古き良き伝統、保守の象徴としてベトナム戦争で英雄となり、実業家としても成功を収める。そしてジェニーはリベラルの象徴としてベトナム戦争に反対し、ドラッグやセックスに溺れておそらくはエイズにかかり死んでゆく。愚かなリベラルの象徴としてジェニーを描いた旨をゼメキスは述べている。
本作は当時の賞を総なめにし、この作品をプロパガンダとして利用した共和党は選挙で圧勝する。
この映画の本当の意図を理解せず感動した自分が恥ずかしくて、今の政権を盲目的に支持してる人間たちを批判できないと思った。
確かにドラマ部分は熟練監督のなせる技で人心をつかむのに長けている。だからこそ本作は始末が悪い。悪質なのだ。
かつての映画創世記に当時の映画技法を確立させたグリフィスの大作「国民の創生」は歴史的ヒットをおさめた。しかし、その内容がKKKを美化する内容であったことから、すでに消滅していたKKKを復活させることとなり、グリフィスは生涯にわたって後悔したようだ。
この例のように、映画は大きな感動を生むと同時にその社会的影響ははかり知れない。本作の罪は大きいが、本作の価値は逆の意味で高まったともいえる。グリフィスの「国民の創生」と同じく反面教師として。この話題作を教材として広く活用すべきであろう。同じくプロパガンダとして利用された作品「バックトゥザフューチャー」も。