劇場公開日 1996年12月28日

「最後の展開には疑問」評決のとき 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5最後の展開には疑問

2025年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 『タイガーランド』に続き、ジョエル・シューマカー監督の作品ということで鑑賞。

 同じく黒人差別を扱った法廷ものとしては『ゴーストオブミシシッピー』が思い起こされた。『ゴーストオブミシシッピー』は次世代における差別の根絶というメッセージを感じられる点で秀逸な映画だった。今作には今作ならではのメッセージは特に感じないが、KKK等の白人至上主義者の行動を生々しく詳細に描いている点で秀逸だと感じた。例えば白昼の路上で堂々とデモ隊への暴力に及ぶあからさまな行動には驚いた。

 それにしても、いくら黒人が嫌いだからといって、白人至上主義者の遵法意識も倫理感も欠けた行動には、一体彼らの心理はどういうものなのかと考えさせられる。私の憶測では、趣味も無い、仕事もいまいち、家族との関係も良くない、他にやることも無い暇な人間が、白人至上主義をアイデンティとして偉くなった気分になり、迫害という馬鹿でもできる行動で鬱憤晴らししているようにしか見えないのだけど。

 総合的には面白い映画だと思うけど、最後の展開は疑問だった。今まで散々裁判をしたのに、最終的には弁護士の演説で劣勢だった原告側の形勢が逆転する展開は安易に思える。被害者が黒人の娘じゃなくて白人の娘だったら...というのは誰でも考えるだろう(「少女は白人だった」という台詞がある)。今更そんな話をして形成逆転するようでは、これまでの裁判は何だったのかと思え、感情論により過ぎている展開に思えた。途中までの展開は良いだけに残念。

根岸 圭一
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