「どこまでも追いかけてくるという恐怖」ヒッチャー(1986) といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
どこまでも追いかけてくるという恐怖
秋田県大館市にある東北唯一の単館常設映画館である「御成座」にて、本作を鑑賞してきました。とても雰囲気のある映画館ですので、今のご時世では遠方からの来館は難しいとは思いますが、一度は訪れていただきたいです。
「殺人ヒッチハイカーの恐怖を描いた作品」という程度の事前知識での鑑賞になりました。
結論ですが、これがなかなか面白いですね。1986年の映画なので当然映像の粗さなどは目につきますが、最近の映画では見られないCG無しの危険なカーアクションや爆発演出が観客を興奮させます。ストーリーも、シンプルに面白いですし色々と考察の余地を残す構成になっていたので、観終わってから頭の中で咀嚼するのがまた楽しい映画でした。ストーリー的にもシチュエーション的にも、スピルバーグ監督の70年代の古い映画である「激突!」を想起させますね。
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陸送の仕事をしていた青年・ジム(C・トーマス・ハウエル)は、客の車に乗ってシカゴからサンディエゴまでの道を走っていた。道中でジョン・ライダーと名乗るヒッチハイカー(ルドガー・ハウアー)を乗せたのだが、その男はヒッチハイクと殺人を繰り返す凶悪犯だった。ナイフを突きつけられ殺される寸前だったジムであったが、一瞬の隙をついてジョンを車から突き落として何とか生き延びる。しかしその後、ジムはジョンに目を付けられてしまい、執拗に追われることとなってしまった……。
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「ヒッチハイカーには気を付けよう」「拳銃を手に入れたら残弾の確認を怠らない」
私がこの映画を観て感じた教訓です。皆さんも心がけましょう。
本作のストーリーはいたってシンプル。殺人犯との追いかけっこですね。
殺人鬼を演じたルドガー・ハウアーは「ブレードランナー」にも出演していましたが、本当に何考えているのか分からない狂気を帯びたキャラクターを演じさせたら右に出る者はいないですね。本当に怖いですよ。
親切心からヒッチハイカーを乗せたのに、ヒッチハイカーが殺人犯で、そいつに延々と追いかけ回されるという巻き込まれ型サスペンスホラー。ジム君には同情します。逃げて逃げて、撒いたかと思えば唐突に出てくる。道中のガソリンスタンドに助けを求めたり警察に捕まったりして他の人の助けを借りようとするシーンが何度もありますが、その度にジョン・ライダーが先回りしていたり、警察を殺害したりして、結局はまた追われることになります。
ジョン・ライダーはジムを殺せるチャンスが何度もあるのに、殺さずに逃がすような場面が何度もあります。しかも、弾のない拳銃を持っているジムに銃弾を差し出したり、自分が持っていた拳銃を手渡したりするなど、反撃のチャンスまで与えています。ジョンはこの時どういう心情だったのか、想像するしかありませんが、何となく察することができるようなストーリー構成になっているのがなかなか上手いです。
ジョンがジム以外の人の前になかなか出てこなかったりあまりにもジムの行動を先読みした犯行を行っていたので、てっきり中盤くらいまでは「ジョン・ライダーという人物は存在せず、ジムが見ている幻覚だったりジムのもう一つの人格とかだったりするのかな」とか考えていましたが、完全に考えすぎでしたね。普通に警察に捕まってましたね。
個人的に、ラストのシーンはめちゃくちゃカッコよかったと思います。逆光の夕日をバックにたばこを吹かす主人公の影が長回しで映るシーン。あのシーンだけずっと見てたい。
古き良き、素晴らしい映画でした。多くの人に観てほしい名作です。オススメです!!