劇場公開日 2021年1月8日

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「無駄を削ぎ落とし、本質を描く=人間って怖い」ヒッチャー(1986) バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0無駄を削ぎ落とし、本質を描く=人間って怖い

2021年1月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

作品は知っていましたが、初見です。怖いの苦手なんです。

人間が持っているであろう「本能」の怖さをジワジワと映像で伝えてくる映画でした。
行動が読めず、動機が不明、そして存在自体が不明な殺人者をヒッチハイカーとして
善意で車に乗せた車の陸運を仕事とする主人公。
この善意が仇となり、数珠繋ぎに悪夢のような出来事が主人公を襲うお話。

説明のできない動機ってあるよなぁ。
執着する、されるってあるよなぁ。
追い込まれたら人間ってなんでもするんだろうなぁ。
思い込みを優先する時ってあるよなぁ。
権力を持つと人間は横暴になるよなぁ。
欲望を抑えられない暴走、集団暴走ってあるよなぁ。
置かれた環境によって人間って変わっていくんだろうなぁ。
そして。。。人間を救えるのは人間なんだよなぁ。

こんなことを思いながら見てました。
これらの人間の「あるある」は最悪の連鎖をした場合、この映画のようなことになるのでしょうね?また、舞台がアメリカ。銃社会であればそれは命のやり取りに直結するんでしょうね。
本作品に登場する災難の元は「たったひとり」なんです。
しかし、関わる人間の行動がどんどん話を複雑にしていき、悲劇を加速させていきます。なんでしょうねぇ、ちょっと確かめれば・・・冷静になれば・・・違ったのかもしれません。
ただ、テンパった人間やその集まりほど怖いものはないですね。
SNSのフェイクニュースや権力者のちょっとした扇動発言で行動す人間は今でもたくさんいるわけです。本質は変わらないですよね。

そして主人公の青年の変わっていく様が恐ろしい。暴力や銃などとはきっと無縁だったに違いない青年がなぜこうなってしまうのか?これも人間の本能なのでしょうね。
(「異端の鳥」の主人公を思い出しました)

人間という生き物は本当に怖いです。

演出面は本当に素晴らしいと思います。
極力説明的なセリフを排除し、映像で語る。眠気覚まし気分でヒッチハイカー乗せたんだろなってのがちゃんとわかりますしね。全体的にそのような感じで心情が映像で伝わってきます。
故に怖さが直接頭に、心に伝わってくるのだと思います。

まぁ、色々書きましたが怖いです。でも面白いです。

バリカタ