劇場公開日 1956年3月9日

「ラストシーンの空撮の余韻が素晴らしい」ピクニック(1955) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ラストシーンの空撮の余韻が素晴らしい

2018年10月4日
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ピクニックの映像が楽しい
日本で言うところの秋の市民祭りといったところ
美人コンテストも行われて、その夜は女王が選ばれて白鳥のボートに載って登場するのをもって発表される

ヒロインのキム・ノヴァクが美しい、大輪の花のように輝くようだ
めまいでは役柄以上に表情に乏しい演技で残念だったが、本作では若さのピークを迎えた娘らしさを満開に演じてみせる

主役のウィリアム・ホールデンはそれなりだ、悪くはない
だか「欲望という名の電車」のマーロンブランド程のインパクトと説得力はない

それなら本作の一番の見所は何なのか?
それはオールドミスの先生役のロザリンド・ラッセルの演技だ
舞台のカンザス州は禁酒法の廃止が1948年と遅く、解禁されたとはいえ未だに人前で飲むのはばかれる
そんな背景の中で初めは酒を断っていながら、嫌よ嫌よといいつつ飲んで酔っぱらってしまい、物語を大きく動かす事件を起こす役だ
彼女の代表作ヒズガールフライデーに出演時32歳、小粋なビジネスガールの役だった
本作はその16年後、彼女は48歳
彼女の結婚への熱望を語るシーンはものすごい説得力があり本作最大の見せ場だ

ラストシーンの走り去るバスからカメラが平原をなめて先行する貨物列車を捉えるロングショットでの空撮は当時としては画期的だったと思う
母の言うとおりヒロインは恐らく幸せにはなれまい
けれども本人もそうと分かりながらバスに乗って追いかける
そんな二人の未来はこれから始まる
大きく広がる平原の先には二人の未来が広がっている
幸せになれるかもしれないと思わせる見事な演出だ

あき240