ピクニック(1936)のレビュー・感想・評価
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映画史に残るブランコに乗る娘のシーン
ある夏の日、パリに住む一家が、馬車で田舎へ来るシーンで始まる。どこでランチをしようか、そこには都会には無い豊かな自然が有った。
流れる川
そよぐ風
歌う小鳥
木陰の優しさ
多感な娘アンリエットは
不思議な感情が芽生える
下心のある田舎の青年は
アンリエットを眩しく思う
ひとときの出会い
揺れ動く恋は偽物か
永遠に続く切なさか
時間は残酷なものか。
原作は1881年の短編。余暇を求め田舎へ遠征するパリの裕福な人々を描いた。その頃のヨーロッパの絵画には公園や近郊の田舎でくつろぐ市民の姿を描いたものも多い。監督は有名画家の息子ジャン・ルノワール。戦争で不明になったフイルムをかき集め、何とか編集し40分の作品に仕上げた。恐らく撮影したであろうラストへと繋がる熱い恋の行方が無いのは残念だけど、時間の流れを川のワンショットで省略したのは正解だと思う。
前後に何もなくても感じるものが有る稀有なシーン。何度も映し出されるブランコのシーンは、彼女の中に湧き上がる新しい感情、抑えきれない喜びのシーンだと理解している。
星3つはブランコのシーン
もうひとつは魅力的な物語
欠落してしまい
完璧では無い物語
だけど素敵な映画
そう思います。
※
10年前に渋谷で鑑賞
※
小さいながら印象に残る、興味深い映画だが…。
自然の力と若さと偶然…そのようなものが作用したのだと思う、男の方はふだんの現実的抑制的がモットーが、この時だけは崩れた。女の方も我を忘れた。二人にとっては、奇跡的なことだった。忘れがたい思い出となった。
生の味わいの一側面、自然が与える生きる力、性の力の一側面を、木漏れ日や水面のゆらめきや雲の流れ、草葉の揺れとともに、美しく、印象的に描かれていて素敵だ。
小さい作品ながら印象に残る。
ただし…母と娘がそろって…という展開はビミョーだった。母なら娘のことをもう少し気にかけるものじゃないだろうか。男の願望が勝手につくりあげたアホらしいストーリーにも思えてくる。またこれは、後の再会の場面がなければ、親子揃って見舞われた強◯事件と誤解されても仕方がない展開じゃないの?
しかし、未完ということだし、原作との関係もあるかもしれないので、気にしないでおこうと思う。
テーマとしては『草の上の昼食』につながるものがあるように思った。
【”月曜日のように悲しい日曜日が過ぎ、数年が経った・・。”楽しきピクニックの風景を描きつつ、人生の哀楽を盛り込んだ品性ある作品。】
ー ひと時の恋に輝き、その恋が破れながらも、その愛を抱き続けた若き女性をみずみずしく描き出した作品。-
■パリで小さな店を持つデュフールは、妻と娘と義母、そして使用人・アナトールを連れて田舎にピクニックにやってきた。
昼食後、デュフール夫人と娘のアンリエットは、舟遊びの青年アンリと、ロドルフに舟遊びに誘われる。
アンリとアンリエットは惹かれあうが。
◆感想
・前半は、デュフール一家が浮き浮きした気分で、ピクニックを愉しむ様が描かれる。
・そして、アンリエットは、アンリの秘密の場所でキスをするのだが・・。
■その後描かれるのは、黒い雲が沸き上がり、驟雨が降る様である。
陽と陰の絶妙な使い分けである。
<別れた二人が、数年後、同じ場所で再開するシーンも何とも切ない。今作は美しくも物語の流れを風景で絶妙に表した作品なのである。>
再会を通じてより深まる断絶
人の皮を被った鬼のような映画だった。そこにあるのは人々の温かな交感などではなく、都会と田舎の仁義なき相互消費だ。都会の家族は田舎を都合のいい楽園程度にしか考えておらず、冒頭から地元の人々に陰口を叩かれる。一方で地元の青年2人組は美しいパリジェンヌとその母親をどうやって籠絡してやろうかとさまざまな手段を講じる。
都会の家族は生来能天気ということもあり、はじめから女をゲーム的に攻略することにしか興味がない青年たちよりは幾分マシに思える。しかし野原で交わされる母と娘の会話はきわめて示唆的だ。娘は虫にも感情があるのかと母に尋ねる。それに対して母はそんなものあるわけないでしょうと一笑に付す。このとき「虫」が何を寓意しているかは言わずもがなだ。
表層上の温かな交流の底で交わされる都会vs田舎の冷戦は人気の少ない森の中でいよいよ最高潮を迎える。青年の下卑た欲望に気づかない娘は木々の間を飛び交う鳥に夢中だ。青年はそれをいきなり押し倒し、強引に我が物とする。
数年後、結局都会のおぼっちゃんと結婚した娘が再び田舎を訪れる。そして自分が押し倒された森の中であの青年と再会を果たす。彼女の瞳を大粒の涙がこぼれ落ちるが、一方で青年の所作はどこか冷たげだ。夫と共にボートで彼岸へと帰っていく彼女の姿を追うのは彼が吐き出すタバコの煙だけ。
いつまでも田舎にボヴァリズム的な夢想を抱く娘と、もはや他人の「所有物」となった女とその肉体に身勝手な喪失感を覚える男。都会と田舎の断絶は二人の再会によってむしろ深刻さを増してしまった。
これ以上に美しい映画を見たことがない…
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