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「イギリスのコテージハウス、その500年」ハワーズ・エンド kthykさんの映画レビュー(感想・評価)

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4.0イギリスのコテージハウス、その500年

kthykさん
2020年10月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

題名のハワーズ・エンドは家の名前。イギリスの500年も前のコーテージ・ハウスを舞台にした20世紀初頭の物語。見終わっての感想は、この映画もまた幾つかの建物が主役となり作られていた、ということ。かってカズオ・イシグロの映画「日の名残り」を見終わった時と同じ印象だ。
ハワーズ・エンドは同時代の田園都市を開発したハワードと関係があるのではないか、映画を見終わった後、気になり図書館で調べてみると、池澤夏樹さんが彼の個人編集・世界文学全集の1巻として吉田健一訳「ハワーズ・エンド」を発刊していたことがわかった。やはり名作は「観るより読め」かと思いつつ、池澤さんの解説を読むとこんなことが書かれていた。

イギリス文学には日本文学の花柳小説とは異なる「風俗小説」の伝統がある。・・・・登場人物の個性よりも社会性の方がプロットを駆動する。役者以上に舞台装置の力が大きく、個性の神話としてのロマン主義には傾かない。作者と読者の間に、暗黙のうちに、社会について共有する理解がある。

なるほど、これでわかった、「日の名残り」も「ハワーズ・エンド」も建物が映画の主役と思ったのは、このイギリス文学の伝統にあったのだ。物語の内容については本を読んでからゆっくり考えることにしよう。「眺めのいい部屋」もそうだったし、「二都物語」・・・・。やはり建築空間が気になるなら、イギリス文学は「観るより読め」ということのようだ。
池澤さんの巻末の解説によれば、「ハワーズ・エンド」の家はロンドンから数十キロ離れたハーフォードシャーにいまでも健在、作者であるエドワード・モーガン・フォスターの母の家だったそうだ。

貧家の母アリスは裕福な女性の家に引き取られ、家庭教師の資格を得る。母アリスを引き取ったマリアンには建築家を目指す甥がいた。この甥とアリスの二番目の子が「ハワーズ・エンド」の作者エドワード。最初の子は生まれて間もなく亡くなり、次男のエドワードが生まれるとすぐに夫も結核で死ぬ。甥を失ったマリアンはエドワードとアリスをずっと庇護しようと決め、やがてアリスとエドワードはハーフォードシャーの家に引っ越し、映画にある「古くて小さくてなんとも感じがいい、赤煉瓦の家」に住むこととなる。つまり、「ハワーズ・エンド」の作者エドワードはこの家で幼年期を過ごし、映画監督ジェームズ・アイヴォリーはこの家を舞台として「ハワーズ・エンド」を撮った。

映画でのこの家の所有者は保守的な実業家ヘンリー(演じるのはアンソニー・ポキンス)の妻ルース。やがてルースは遺産として「ハワーズ・エンド」を親友である自由主義的なマーガレットに譲り、さらに「ハワーズ・エンド」はマーガレットの妹ヘレンと知的だが不運な労働者パスト氏の間に生まれた不義の子に引き継がれる。つまりハーフォードシャーの500年前のコーテージ・ハウスは映画や物語の中でも現実と似たような経過を辿り生きつづけていく。

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kthyk
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