劇場公開日 2021年3月5日

「復刻版文学作品」異邦人 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5復刻版文学作品

2021年4月18日
iPhoneアプリから投稿

カミュの名作の巨匠ヴィスコンティと名優マストロヤンニによる映画化だけど、正直言って古く感じました。人間を狂わせるようなアルジェの息苦しい暑さや雰囲気はよく出ているけど、前半はやや退屈で眠気を感じるくらい。後半の裁判シーンで持ち直すものの、殺人罪の公判なのに、検察側の宗教観に偏った被告の人間性の否定にシフトしていきます。本来は主人公の行動の不条理がテーマなんだろうけど、殺人はともかく神への無関心や他人との距離感は、むしろ今の感覚的にはあまり不条理ではなく、論点の違う裁判の方が不条理に感じます。そう言う意味で異邦人は主人公なのか、周りの社会なのか、もういっぺん、原作を読み直してみよっかな。役者は、さすが天下の二枚目マストロヤンニだけど、この役にしてはちょい老けすぎかな。

シネマディクト
pipiさんのコメント
2021年4月27日

ありがとうございます!
シネマディクトさんにコメント頂いてから改めて大急ぎで小説再読しました(笑)(遥か昔、学生時代に読んだきりでしたので)

検事や弁護士の形容に「長口舌」「滑稽」という描写が登場しており、私がこの語句をレビューで用いたのは小説を覚えていた為ではなく純粋に映画鑑賞から導き出されたものでありましたので、改めてヴィスコンティの映像化の正確さに感服致しました。

お読みになられた文庫本は新潮社ですか?確かに詰め込み過ぎで各トピックが小説に何をもたらしているかまで言及出来ていない印象ですね。枚数制限の中での表現では仕方ないのでしょうね。

ただ、最後の「平成7年5月15日」の加筆が面白いです。
即ち「この小説は、ムルソーの極中回想記」に見せかけているが、真実は「法廷でムルソーが視線を交わした若い新聞記者」の執筆であり、その記者とは「作者、アルベール・カミュ」である。と言っていると思うんです。その仮説に対して読者にクリティカル・リーディングして欲しい、というわけですね。
手塚治虫先生がご自身の漫画に自分自身をキャラクターとして登場させるごとく、この傍聴席の記者は作者自身ではないか?と。

そんな風にも考えてみると、異邦人に秘められた謎解きはまだまだ数十年以上は楽しめそうですね♪

pipi
talismanさんのコメント
2021年4月26日

コメントありがとうございます!クレメルはベルモンドの映画でもいやな奴だったので!すみません。

talisman