「ヴィスコンティ流の挿絵?」異邦人 osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴィスコンティ流の挿絵?
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観た後に知ったが、ヴィスコンティは最初から原作の挿絵として、この映画を作ったらしい。作った本人としては、かなり良い出来の挿絵になったらしいが、どんなに素晴らしい絵でも所詮は挿絵、やはり、これは原作を読んでから観た方が良さそうだ。
但し、ラストシーンのマストロヤンニの表情だけは挿絵を超えて、ヴィスコンティが自分流の翻案にした気がする。
まだ原作を読んでないが、おそらく最後まで徹底して乾いた虚無感の余白を残して終わっているような気がするので。
というか、仮に原作がそうでなかったとしても映画の方は、そういったラストにして欲しかった。
あと、アンナ・カリーナはミスキャストに感じた。ゴダール映画の観過ぎか、奔放でない彼女は何処か物足りない。
イタリア語のアフレコを当てるくらいなら、ヴィスコンティ常連のクラウディア・カルディナーレの方が良かった。役にも合っていたはず。
ちなみに主人公の方は、最初はアラン・ドロンで考えていたらしいが、これはマストロヤンニで正解だったと思う。
アラン・ドロンも確かに虚無感はあるが、マストロヤンニと比べると虚無的な佇まいに少し余白が足りないので。
あとアラブ人を撃ってしまうシーンは、拳銃のアップではなく、銃声がなっている間は、思考停止になるほど、ひたすら眩しい太陽にして欲しかった。
そして撃ち殺した後には、引きのロングショットで、もっと乾いた空気感を出して欲しかった。
そして、本当は、この世界観はフランス語の方がリアルだったはず。
イタリア語ならではの人懐っこい感じや独特の感情表現が、ちょっと合わなかった気がする。
フランス語版もありそうなので、是非そちらも見てみたい。
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