「自分が患者ならパッチよりミッチを選ぶ。」パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
自分が患者ならパッチよりミッチを選ぶ。
実在するドクター、パッチ・アダムスの人生を基にした伝記映画。
主人公パッチ・アダムスを演じるのは『ジュマンジ』『グッド・ウィル・ハンティング』の、伝説的名優ロビン・ウィリアムズ。
パッチのルームメイト、ミッチを演じたのは『セント・オブ・ウーマン』『ビッグ・リボウスキ』の、後のオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマン。
パッチ・アダムスとはクリニクラウン(臨床道化師)やホスピタルクラウンという、笑いで病気を治療するという概念を作った偉いお医者さんらしいです。
映画『ジョーカー』の中で、アーサーがやってたヤツですね。
実在の医師パッチ・アダムスをモデルにしてはいるが、物語は創作の部分も多い。
特に大きな変更点は年齢。映画でパッチが医科大学に入学するのは中年になってからだが、実際は20代前半で医学を学び始めた様である。
このように変更した最も大きな理由は、やはりロビン・ウィリアムズを起用したかったからだろう。
この役のロビン・ウィリアムズは正にハマり役!
もうパッチ・アダムス本人だとしか思えない程のリアリティがあります!
ロビン・ウィリアムズ以外でこの映画を作ることは考えられなかったのではないでしょうか?
映画の冒頭、精神病院に入院したパッチが院内の患者と交流するうちに医師を志すようになるというシークエンスには感動します。
時間もコンパクトに纏まっており、非常に完成度が高い。
映画開始早々泣かされました…😭
何歳からでも学ぶことは出来るというメッセージは非常にポジティブだし感動的。
パッチの馬鹿みたいに明るい性格も、観ていて爽快感があります。
そして、道化の姿になって病気の子供たちを笑わせる姿にはまたも泣かされました😭
映画の前半は本当に感動的だし面白い。個人的には満点です。
しかし、後半になるにつれて綻びが…
まず、だんだんパッチがウザくなってくる。流石にやり過ぎだろ。周りの警告聞けって。臨床出来るのは3年からって言ってんだろうが!!
ミッチも言及していたが、パッチが熱心に勉強している描写がない。
コレで成績トップとか言われても真実味がない。
無免許での診療所開設は流石にまずいだろ。
史実ではちゃんと卒業してから開業しているのに、この改編は頂けない。
だいたい、学生の本分は勉強では?
ただでさえ死ぬほど勉強しないといけないのに患者まで診ていたら落第すると思うのですが。
唐突な恋人の死。
あそこ絶対いらんやろ。というより、この物語に恋愛要素いらんやろ。
やるのなら、恋人を殺した犯人は自殺しようとするも死ぬことが出来ず、その犯人に対する憎しみと医師としての本分との間で悩み苦しむ展開が必要だったのではないだろうか。
クライマックスの審問会も全然興味をそそられなかった。だって全部パッチが悪いんだもん。
悪者っぽかった学部長もそんなに悪い人じゃないし。
やりたいことは色々あったがそれがうまく噛み合っていない映画という印象を受けた。
笑いによる治療、夢を叶えるのには年齢は関係ないというメッセージ、恋人の死というサスペンス要素、神に対する疑問、権威に対抗する反骨精神、etc。
こんなに詰め込まんでもよかったと思う。一つ一つの味が薄い…
個人的にはパッチよりも断然ミッチの方に感情移入できた。
天才肌のパッチに対抗心を燃やす男。
自分の信念を持ち、良い医者になることを目指しており、自分の考えと相容れないパッチを嫌悪する。
しかし、最後にはパッチの才能を認め、辞めようとする彼を引き留め、彼から教えを請うまでに成長する。
無茶苦茶ミッチいいヤツ!
フィリップ・シーモア・ホフマンの演技と相まって最高のキャラクターになっていた。
もっと出番を増やしてパッチのライバルとして描いていれば、この映画の面白みも増したのではないか。
後半には乗れなかったが前半は良かった。ロビン・ウィリアムズとフィリップ・シーモア・ホフマンは素晴らしい役者だなぁ。
2人とも2014年に、非業の死を迎えたのが残念でならない…