ハスラーのレビュー・感想・評価
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単なるビリヤード映画ではなく、主人公の変化を硬派に描いたヒューマンドラマ
誰もが一度はそのタイトルを聞いたことがあるはずなのに、なかなか手が出せない。「大人になった時に見よう」と思いながら、すっかり大人になってもまだ見ていない。そんな人も多いはず。確かにとっつき易いとは言い難い。カラー時代にもかかわらずモノクロを突き通し、しかもポール・ニューマンのアクターズスタジオ仕込みの、体の芯から本人になりきった演技に頼るところも多い。
だが、40年代末から始まる赤狩りの影響を受け、50年代は苦難を強いられたロッセン監督のキャリアを思うと、主人公の人生が重なって見えてくる節がある。自分の得意とする分野の腕前でのし上がろうとし、そこで思いがけない躓きがあって、今度は自分を利用しようとする他人の口車に乗せられてさらに精神的などん底を経験する。だがこの一件によって何かが変わる。彼も変わる。本作は単なるビリヤード映画ではない。そうやって変わりゆく姿を実直に捉えた硬派な一作なのだ。
思い出とともに振り返る名画
「ハスラー」についてレビューを書くなら避けて通れないことがある。この映画、初めて観たのはもうかれこれ10年、いや15年くらい前だ。
当時の私はあまりにも無知で愚かだった。今は賢いのかと聞かれればそれも疑問だが、映画に関して言えば虫とか草みたいな存在だった。
「ポール・ニューマンなら観たことある」「最近ビリヤードやって面白かった」そんな軽いノリで手を出したもんだから、さあ大変。
白黒、二時間超え、90分にも及ぶプールシーン、次々に立ちはだかる強敵を前に呆気なく撃沈。
ギブアップを宣言して、寝た。だから正確に言うと「観てない」。
どこで寝たのか見当もつかない。なんだかプールシーンの最中に寝たような気がするが、それも定かじゃない。
この時の自分を振り返ると、恥ずかしい、と言うよりむしろ率先して笑えてくる。
そりゃそうだよ。ビリヤード覚えたての子どもがミネソタ・ファッツと勝負しようって言ってるのと同じなんだから。
ファッツの壁は厚かった。
今なら勝負の最中にファッツが手を洗ってることに気づく余裕もあるが、あの時の自分じゃ例え寝落ちしなかったとしても、ムリ。バートのセリフを聞いて「そんなシーンあったかな?」くらいにしか思わなかっただろう。
颯爽とした姿に気づいてあげられなくて、ごめんよファッツ。
そんなわけで、ストーリーについて知ったのは今回が初めてと言って良いでしょう(胸を張って言うことじゃないが)。
初めて「ハスラー」を観た、いや観ようとした私と同じく、エディはイキッた若者だ。何なら自分の才能に酔いしれてる分タチが悪いかもしれない。
そんな思い上がった若者が、経験と覚悟もなく難敵に挑み挫折。落ちぶれて行きずりの女の家に転がり込む。
ここで出逢うサラがまたエディとどっこいの卑屈な負け犬女子。自分に自信が持てず、自分を捨てた父親が毎月送ってくる小切手で生活し、飲んだくれては青春を浪費する日々。
そんなサラが親指を骨折してボロボロになったエディを支えるべく、急にキリッとし出すのが面白い。
どこの馬の骨ともわからん流れ者・エディの、一体どこが気に入ったのかしら。白黒でもキラキラと輝いているあの瞳かしら。
グズグズと中二っぽいポエムをしたためていた彼女はどこかにスッ飛び、甲斐甲斐しくエディの世話を焼く。ボタンも留めてあげちゃう。
しかし親指の治ったエディはおめかしして出掛けた高級レストランで、性懲りもなくバートとプール勝負に出るという。
サラの中にも予感はあっただろうな。いつもサラの部屋で寝るか、イチャつくか、酒飲むかの三択だったのに、急にお洒落して食事だもの。
こんなんプロポーズか旅に出るか、天国か地獄の二択ですよ。それで地獄なんだから激おこなのはしょうがない。
まぁ、今更だけどサラのキャラ造形がメチャクチャ古い。1961年の映画だから当たり前だけど。
夢を追う男のロマンと、愛されたい女の涙。今こんな映画作っても叩かれるだけだろうけど、意外と筋はしっかりしてるし、エディの成長も苦悩もちゃんと描かれている。
あと、プールシーンは思っているほど長くないし、ゲームのルールがわからなくてもカッコいいショットの連発で楽しめる。
経験を積み、色んな事を糧にしてようやく乗り越えられる分厚い壁。今ようやくこの映画を楽しく最後まで観ることが出来た、ということは、私もファッツと闘える土俵に立てたのかもしれない。
モノクロを鮮やかに彩る、抗えないスターの輝き
映像も音楽もクール。そして何より若きポールニューマンの圧倒的スター性。派手なCGやガチャガチャしたカット割りなんて無くても、ストーリーとキャラクターで観る者をグイグイ引きつける。破滅的なヒロインの末路が作品をよりビターにし、ストイックな男のドラマとなってます。
素敵な映画でした。
若い時に一度見て途中で挫折した映画でした。 確かに、モノクロでスト...
若い時に一度見て途中で挫折した映画でした。
確かに、モノクロでストーリーの盛り上がりも感じず、
坦々と話が進んで行く。
改めて見ると、一人の青年の成長の物語で見て良かったと
思える映画でした。
華のあるスター ✨ ポール・ニューマン
若きハスラーエディをポール・ニューマンが演じる。美しい女性サラ( パイパー・ローリー )とカフェで出逢い恋に落ちる…。
ビリヤードのルールさえ知らないが、ポール・ニューマンとパイパー・ローリーの美しさに見入ってしまった。
ー愛なんて知るか
ー愛って鎖かよ
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕版)
素晴らしかった
ポールニューマン特集3本目。客入りは毎回よくないのだけど、とうとう貸し切り状態だ。いつ見たのかVHSだったかDVDだったか思い出せないのだけど2回目だ。
ひどい集客とは逆行して内容は最高に面白い。「あの時こうしていれば」などと自分の人生にも置き換えて考えさせられるような、「おいそこ、こうしろ」と叫びたくなるような場面が多々ある。特に最初に名人と対戦する時は、ヘロヘロになって名人の方がバリっと身支度を整えているのに対してエディはジャケットを着たのに襟が内側に折れていて、こりゃ駄目だと思う。
ヒロインはヒロインで切ない人生を送っていて、自殺はないわ~でもしょうがないかな~と遣る瀬無い気持ちになるのだけど、彼女よりひどい境遇にある女性も知っている。そんなこと気にしても仕方がないのだけど、つい考えてしまう。
主人公のエディをスポンサードする男がひどい。ぶっ殺されて欲しい。
最初から最後まで濃厚だ。
渋いけどねえ。
随分昔に「2」を見たからか、ちょっと見る前の期待値を上げすぎた。
勝負事なのに、余るハラハラせず。
2時間ちょっとが、長く感じた。
「俺は負け犬か?」と、聞いているのがすでに負け犬。
勝負の降りどきを心得ているものが、真の勝者。
「シンシナティ・キッド」と錯綜してしまい…
何十年ぶりかの鑑賞で、
ノーマン・ジュイソン監督の
「シンシナティ・キッド」と錯綜してしまい、
エドワード・G・ロビンソンが
なかなか出てこないなぁと思うなど、
大勘違いしていた。
従って、
優れたビリヤード能力に自惚れながら
廃退的な生き方の若者の自滅が
描かれるのだろうと観始めてしまい、
ラストの希望的展開の忘却から
終盤まで何とも重苦しい展開と感じながらの
鑑賞になってしまった。
しかし、その中でも、
序盤の二人のハスラーによる
勝負のシーンは緊迫感に溢れ、
この作品一番の名場面ではないだろうか。
中盤、これまでの父親役のような
ギャンブラー仲間と決別して、
新たなギャンブラー組織に組み入れられる
という展開は、
勝負師というよりは
金銭的に個人がより歯車化することを
意味しているのだろうか。
終盤、
登場するハスラーやギャンブラーが
組織的にお金に支配されている中で、
恋人の死を切っ掛けに
お金には換えられない想いや人生が
あることを知り、
新しく人間らしさの備わった主人公の
個人への回帰的再生の将来が
示唆されたかに見えた。
また、組織世界に染まっているはずの
太った対戦相手のハスラーの
意味深な表情や仕草には
彼の想いが伝播しているようにも感じる。
ただ、苦しい時に支えてくれた恋人との
生活と死が、
主人公の進歩した人生観の獲得との
リンク性が、演出の上で
少し弱い点が気になる結末には感じた。
ポール・ニューマンの瑞々しい演技が正当に評価された出世作の、男の成長をテーマにした勝負師の世界
1974年 6月6日 地上波テレビ
PM11時05分より土曜ロードショー「ハスラー」見学。アメリカ、1962年度、ロバート・ロッセン監督52歳の第10作品目。ロッセン監督作品の最高傑作と謂われる。これは初めて聴く監督名。主演は「暴力脱獄」の演技で、その魅力に取り憑かれたポール・ニューマン。この作品でアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされる。4度目の候補作品「暴力脱獄」より好感持てる名演技。共演のパイパー・ローリーは、エリザベス・テーラーの雰囲気に似て可愛らしく、確かな演技力を持つ女優さん。この映画は、ニューマンの好敵手になるハスラーの貫禄と渋さを持つジャッキー・グリースンと非情な賭博師ジョージ・C・スコットの二人の男と対決するニューマンの勝負の世界と、恋人ローリーとの恋愛を通して主人公が一人の人間として成長していく姿を描いた秀作だった。ドラマティックにして瑞々しい人生ドラマに感動する。見応えにも満足。そして、モノクロ映像の美しさも印象に残る。 採点☆☆☆☆★
テレビで見学した映画の印象を記録した最初の記念映画。劇場映画は前年の12月から始めていたものの、日本語の吹き替えやフレーム処理と編集カットされたテレビ放映の映画を批評するのは抵抗があった。しかし、この映画の感動をどうしても残したくなり、結局その後社会人になるまでの数年間続けることになる。邦画洋画合わせて約580本。
今回完全な形で47年振りに観ることが出来て幸せだった。真剣に映画と対峙していた頃の自分に戻ることで、その時の未熟さや無知さを想い出してしまう。映画は、改めてロッセン監督の演出が素晴らしいと感心した。ユージン・シャフタンの撮影も印象より更に素晴らしいものだったし、ポール・ニューマンは勿論のこと、ジャッキー・グリースンの心技体が整った伝説のビリヤード・プレイヤーのなり切りがやっぱりいい。パイパー・ローリーは、その後1976年の「キャリー」でカムバックした時には驚いた。この映画の影ある破滅型のヒロイン像の儚さが印象的だったからだが、今見ても演技力の確りした女優の存在感に魅了される。
扱ったテーマは、才能に溺れる若者の心の成長。それは、ハスラーと呼ばれるギャンブラーもスポーツ選手も普通の社会人にも当てはまる、青春期にある怖いもの知らずや自惚れや自信過剰などを自制し、体力と才能に見合った精神力をどう身に付けるかに、人生の豊かさが係っている真理ではないだろうか。ニューマン扮するエディの弱さに共振したサラという女性との恋が、お互いを慰め合うだけの段階で悲劇に転じてしまう不幸が、結局エディの眼を覚ませ男として強くさせている。男が強くなるためには女性の存在が大きい。反対に女性が強くなるためには男は必要ない。そこに男と女の難しさと面白さがある。
名画ですね。
50代男ですが、学生時代にレンタルビデオで見て以来の鑑賞。
ストーリーは大まかしか覚えておらず、最後ボロガチで終わりだなと
退屈を感じていたが、恋人のサラが登場して以降、物語はどんどん流転していく。
素晴らしい映画ですね。皆演技がうまいし、映画の見せ方も良かった。
バート役のジョージCスコット(他の映画でも見た気がする)、悪だよねー。
腕一本でのしあがろうとする強気一辺倒の若者エディが、
女を愛し、失う。そして、よりタフに、よりクールに、数段凄みを増して
プールに戻ってくる。無敵の強さの裏には、決して癒されない心がある。
人生の勝負のかけ方。
前半の息詰まる戦い。
若くて、自分の才能に思い上がっているエディ。
間のとりかた、小首の傾げ方、笑い方…ちょっとしたそぶり。トム・クルーズ様と重なる…。格好良い男は皆似るのか、トム様がニューマン氏を真似したのか?
その青さ加減が痛い。
対するミネソタ・ファッジ。
どことなく、ラッセル・クロウ氏に似ている…。
どことなく愛嬌があるのだが、きわめて冷静に事の顛末を見極める眼。
逆風の時こそ、紳士たれ、の姿に惚れてしまう。
なんて、役者の一挙手一投足を愛でる余裕もあった。
けれど、後半はそんな思いも吹っ飛んで、映画にのめり込んでしまった。
驕り、挫折。そしてまた驕り。
恋人ほったらかして何しているんだ。恋人が場に合わずに悲しい思いをしているのにも気が付かずに、どうにかなるという楽天志向。自分しか見えていない。
二人の時間があったからこその寂しさ。たくさんの人の中だからこそ感じる孤独。
そしてそこに忍び寄る魔の手…。
なぜ、どうして、ああしていれば…。
そんな後悔・絶望の淵からの挑戦。よく王者がその戦いを受けたなあ。冷静に賭け事の行方を追うようで、実はミネソタ・ファッジも損得なして楽しみたかったのかしら。
ピンチになった時こその心構え。
自分を信じる、相手を信じるって?
両極端なエディとミネソタ・ファッジ。
昔の相棒。
恋人。
損得。
誰が勝者で、誰が敗者なのか。
賭けビリヤードの物語だけれど、人生を考えてしまう。
物語・演出がいい。
あえて、白黒での映像。なぜか、ギラギラしている。華やかなパーティ場面もあるのに、場末にうごめく欲望がドロドロする。バスステーションもうらびれて、二人が出会う場としての雰囲気が最高。
そして、勿論、役者もいい。
エディの青さに、ハラハラしてしまう。
サラの、ちょっと人生をあきらめながらも、エディとの関係に温かさを感じていく、それなのに、払しょくできない孤独さに胸をかきむしられる。
ファッツのダンディズムにいつの間にか惹かれる。
そして、バートが、メフィストフェレスかというほど狡猾で押しの強いいやらしさを振りまき、物語にマスタードを効かせる。
ビリヤードのキュー、玉のはじく音、酒、たばこの煙と男の欲と、女の寂しさにむせ返る。
名作です。
ジャズ
この2作目より25年前に作られたオリジナルを観れば、2作目でなぜオスカー主演男優賞をとったのかがわかる。コチラの方が数段上だから、このとき与えられなかった分を加味してあったのでしょう、なんとなくですけど・・・
JTSバーボンを注文するエディ。バートとエディの会話がハードボイルドしていて面白い。エディとサラ・パッカードもそうだけど、イキな会話が心地よい。音楽がずっとジャズなのもよかったです。
脳ある鷹は爪を隠す。
オープニングシーン、古すぎて誰がポールニューマンなの?って感じで見ていました(笑)
有る意味、素性と腕を隠すハスラーに騙されている気分で良かった!。
そしてカモが見つかった時の、主人公のニヤリとした顔がめちゃカッコ良かった。
その際、台を映さずに、玉がポケットに入る音とそのニヤリ顔だけで表現しているところが、クゥー、しびれるぅー!
無駄な説明もなく、ハスラー達の姿がリアルに描かれていて、名作だと思います。
青さ丸出しで痛々しい
登場人物のアクが強すぎて何が何やら。
特に主人公が、若気の至りすぎて共感しづらい。
カッコツケテ調子に乗って酒を飲んで負ける、みたいなのは…。
ライバルに勝ったといっても
全てを失い自暴自棄になって得た勝利なので達成感もない。
こんな状況だと勝っても負けてもどっちでもいいですね。
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