劇場公開日 1959年7月7日

「ワイダ監督の代表的作品に鑑賞回数を重ねるほどに評価が高まり…」灰とダイヤモンド KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ワイダ監督の代表的作品に鑑賞回数を重ねるほどに評価が高まり…

2023年10月9日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

この作品は、1959年のキネマ旬報ベストテン
において、「十二人の怒れる男」に次いで、
第2位に選ばれると共に、
過去のオールタイムベストテンでは
第13位や第16位に選出されている
名作中の名作だが、
初めての鑑賞ではその所以をほとんど
理解力出来ていなかったような記憶がある。
しかし、その後、他のワイダ作品に
接っしてきたこともあり、徐々にその理由が
分かってきたようにも感じる。

マチェクがサングラスをしているのが、
ワイダ監督作品の「地下水道」に繋がる
レジスタンス活動のせいだったとか、
彼が、間違って殺害した2人の残像に
どこまでも追いかけられること等、
幾つかのすっかりと忘れていた要素を
確認出来たことに加え、改めて感じたのは、
どちら側に組したかに関わらず、
双方の陣営の祖国への想いへの理解や、
更には、実はそれぞれの人間関係が近かった
との前提を設け、
それらを当時の国家分断を強調する要素に
していたようにも感じる
ワイダ監督の演出だった。

また、ワイダ監督は、
ドイツ降伏に伴う祝宴を
退廃的であたかも葬儀のように描き、
間接的手法で巧妙に
ソ連支配を批判したようにも思えた。

そして、ラストシーンのゴミの中での
マチェクの死は、
神に見放されたと思われるような
逆さキリスト像の場面同様、
彼が同志に語った、
普通に生きたい、普通に恋もしたい、
との想いを、
共産主義体制でもたらされる
人間として大切なものの要素の死の象徴
として描こうしたのではなかったろうか。

KENZO一級建築士事務所