劇場公開日 1959年7月7日

「地下迷宮をさまよった戦士の虚しい最後」灰とダイヤモンド 月野沙漠さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5地下迷宮をさまよった戦士の虚しい最後

2017年5月5日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

他の人のレビューを読むとソ連や共産党を暗に批判している映画と解釈している人が多いようだけど、俺はこの映画は素直に武力抵抗の愚かさ、虚しさ、残酷さを伝えたかったんだと思うよ。もちろん監督はドイツと同じ位ソ連にも憤りを感じているでしょう。『世代』『地下水道』を観た時点ではワイダ監督が武力抵抗に対してどういうスタンスか判断しかねていましたが、この作品で確信しましたね。監督自身のレジスタンス活動経験も踏まえて、愚かな行為だったと伝えたいのだと。
映画の途中で反政府勢力の禿の少佐が言う、地下水道で多くの犠牲を払いながら戦って、戦が終わってみれば国はソ連に支配されいて、自分たちの国を作ろうと戦ってきた我々の立場を守るには戦い続けるしかない、という意味合いのセリフ。大半の国民が戦より安定を選んでいる中で、意地や面子にこだわり続けて戦い続けることを選択する、そんな狂気性があのセリフに詰まっていたと思う。彼らの創る世界には場末のバーでの小さな恋の存在も許されないのです。

ラストのシーツが赤く染まるシーン、とても印象的。モノクロだから黒く見えている筈の赤が、鮮明な赤に見えた。
そしてマチェクが死ぬ場所も。民族の誇りをかけて戦った男の死に場所としてふさわしいだろうか?

月野沙漠