「監督が男の子に演出をつける様子も見てみたい」パーフェクト ワールド うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
監督が男の子に演出をつける様子も見てみたい
ケビン・コスナーは好きじゃありませんでした。
彼の主演作もほとんど見てないけど、食わず嫌いだったようです。
この映画では、本当に素晴らしい演技をしていますが、彼以上に素晴らしいのが、子役の男の子。最後までずっと出ずっぱりで、コスナーとの掛け合いは、息もぴったりで、恐怖におびえる顔、望みが叶った満ち足りた顔、義務感と愛情の板挟みになった顔、など、本当に様々な表情を見せてくれます。
彼がその後役者の道を選ばなかったようなのは、残念な限りですが、とにかく、イーストウッドの演出は、神業級です。欲しい表情を逃さずにカメラに収める指示の出し方と、子供に噛んで含むように演出をする様子が思い浮かびます。
この映画の空気感は、その後のイーストウッド監督作品にも引き継がれていきます。虚無感と、深い洞察力、そして説得力あふれる映像。
本人がアクションスターをやんわりとフェードアウトしていったことで、本当に撮りたい映画に向き合うことが出来るようになっていったのでしょう。
ローラ・ダーンのプロファイリングがややくどいなと思いましたが、それで、観客はコスナーのキャラクターを理解できる構成なので、ほとんどのセリフはストーリー上必要な説明ばかり。ちょっと残念な役回りでした。
この映画は1993年公開ですが、まったく古臭さがありません。
もともとケネディ暗殺直前のテキサスが舞台なので、当時からレトロ調に作ってあったのでしょうが、無駄に派手な音を入れたり、特殊効果を使ったりしていないことが良かったのでしょう。今見ても、当時の趣がそのまま生きています。
ついでに、ちょっと調べたら、「ショーシャンクの空に」が94年。「セブン」が95年。この二本の映画は、どうやら「パーフェクト・ワールド」の影響を色濃く受けているようです。
さらにさらに、「キャスパー」が実写映画化されたのが95年で、この時にはなんとクリント・イーストウッド本人がカメオ出演しています。映画の中に散りばめられた遊び心に、うれしくなってしまいました。
それにしても、この映画でケビン・コスナーはいったい何本ラッキーストライクを吸ったのか…「作者の意図を尊重して、そのまま放映します」という冒頭の注意書きが子供への暴力についてなのか、コスナーの喫煙シーンなのか、たぶん両方だと思いますが、今日のテレビコードでは放映不可能なようです。
2017.9.29