「天国への扉」ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)
天国への扉
一人暮らしで仕事もバリバリしていたあの頃。
仕事は自分なりに頑張っていて、エリアマネージャー的ポジションも任される様になり、やり甲斐もあった。
だけどその時の彼氏が結婚したがっていて、出産も考えると、今なのかなぁ〜とか思ってた。
少しして父が入院したり、後輩が病んだり。。疲れていた。生きていくのってしんどいなぁ大変だなぁって思ってた。
そんな時、深夜のTVでたまたま見た本作。
衝撃?感動?当てはまる言葉が見つからない感覚になった。
それからずっと心にある作品。
今回の「Filmarks 90's」の企画でリバイバル上映されると知り、初めて劇場で鑑賞出来ました。
余命わすかな2人のロードムービー。
末期病棟で同室となったマーチンとルディ。
性格も考え方も違う2人が、死ぬ前にまだ見たことのない海を見るため病室を抜け出し海を目指す。
その道中、車を盗んだり銀行強盗をしたり、銃までぶっ放す。
余命わずかだからといって犯罪を犯してはならぬ。。というご意見や、ツッコミ所もそりゃあるよ。それは承知。
だけど、この作品はそこじゃない。
同じ運命を背負った2人の男同士にしかわからない芽生えた友情でみせる、残りわずかな人生となった時、本当に大切なこと、人生で何が価値があるのかを問いかけてくる作品なんだ!
死のタイムリミット。その時はもう目の前だ。
そんな絶望的な状況でも「海を見たい」という、ささやかな希望を叶えるため、前向きに死に向かおうとする2人を見ていると、自然と涙が溢れるし、海を見せてあげたくなる。
脚本、演出、演技、配役、音楽、全てが完璧。
若き日のティル・シュヴァイガーがクールでイケメン過ぎて国宝。
常識人でマーチンに押されがちなルディだったが、行動を共にし、徐々に自分の心に正直に、大胆になっていく。
ルディを演じたヤン・ヨーゼフ・リーファースとの、この2人の対比も素晴らしく効いている!
2人の"ツラ"が良いのだ!!
完璧な2人。
本作と同名の楽曲。
ボブ・ディランの名曲は勿論知っているが、本作の事は知らなかったので、、
初見で見た時、ラストに流れた
「Knocin' On Heaven's Door」を聞いた時は泣いてしまった。
この曲はリリースされたのがベトナム戦争終結の時期だったと思う。
帰還兵達は戦争で傷つき、PTSDで苦しんでいた現実がある。
その背景に想いを馳せてしまい、この曲を聴くと、もれなく泣いてしまう。
そして本作を観ても、もれなく泣いてしまう。
2人が出会えて良かった。
自らの死のタイムリミットが近づいてきた時。。きっと私は本作を思い出す。