「余命いくばくもない男達のバカ丸出しの純情に振り回されるヤケクソ映画の金字塔」ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア よねさんの映画レビュー(感想・評価)
余命いくばくもない男達のバカ丸出しの純情に振り回されるヤケクソ映画の金字塔
ほぼほぼ25年ぶりの鑑賞なのでエンディングを除いてほぼ新作映画を観ているような感覚で観れました。すなわち当時全然気付いてなかったことがバンバン眼球に飛び込んでくる。オープニングで出てくるナイトクラブの名前が“トゥルー・ロマンス”、そこでしょーもないジョークを飛ばす男とそれをこれっぽっちも理解しない相棒の噛み合わない会話は『レザボア・ドッグス』の冒頭シーンみたいで、黒スーツに黒ネクタイの出立ちは『パルプ・フィクション』のヴィンセントとジュールスそのもの、プレスリーとキャデラックが重要なキーワードになるものまた『トゥルー・ロマンス』。ということでこれでもかとタランティーノ作品へのリスペクトが詰まっていることに驚きました。本作も『トゥルー〜』と同じくヤケクソの逃避行を描いた作品ですがバイオレンスはほとんどごっそり取り除かれて、その代わりにブチ込まれるのが愛すべきバカ達による狂乱。主人公も彼らを追いかけるチンピラコンビも警察も出てくる男達が一人を除いて全員知性がこれっぽっちもないので何事も行き当たりばったり、それでもほぼ運だけで窮地を切り抜ける。この迷惑極まりないバカ騒ぎはガイ・リッチーの『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』に受け継がれたような気がします。そんな頭痛しかないバカ騒ぎがあるがゆえに終幕の美しさも『トゥルー・ロマンス』の影響下にあると思います。天国ではみんな海の話しかしないらしいぜ、お前海を見たことないの?じゃあ行こうぜ!余命いくばくもない男達のバカ丸出しの純情にニヤニヤしながら最後にはさめざめと泣かされる永遠の傑作です。そうだ、『トゥルー〜』におけるデニス・ホッパーが本作でのルトガー・ハウアーであり、それが『ロック、ストック〜』におけるスティングに受け継がれてるのかなと思いました。
私はこういう自暴自棄な主人公の映画をヤケクソ映画と呼んでいますが、それの起源はニューシネマにあります。『明日に向かって撃て!』、『俺たちに明日はない』、『イージー★ライダー』、『バニシング・ポイント』、『ダーティ・メリー クレイジー・ラリー』・・・その隆盛のほぼほぼ20年後に『テルマ&ルイーズ』、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』、『トゥルー・ロマンス』そして本作とヤケクソ映画が量産された時代があったことはしっかりと胸に刻んでおきたいと思います。