劇場公開日 1959年8月22日

「崇高な目的をもって生きる女性」尼僧物語 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0崇高な目的をもって生きる女性

2015年2月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

難しい

総合80点 ( ストーリー:80点|キャスト:80点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:60点 )

 尼さんといえば、厳格で禁欲的で慎ましい生活をしているという印象で、とかく堅苦しい。そのような主題の映画だということで、これはもしかすると観ていてかなり暇をもてあそぶのではないかと危惧したが、とりあえずオードリー出演作ということで観てみた。しかし実際はそんな心配も無用だった。

 確かに修道院での生活は厳しい。私語すら許されず、常に修行と自己反省の日々で研鑽を積むだけの日々を、記録映像に近い演出で描いていく。だがそれは退屈なものではなく、コンゴで人道的支援のために尽くすという強い意志をもって修道院に入りながらも、厳しい生活に戸惑い、それでも目的のために敬虔でありながら質素な毎日に耐え忍ぶ姿は興味深かった。
 彼女の生き方はマザー・テレサを思い起こさせる。仏教の修行ならばまだ多少の知識はあるものの、俗世に住んでいるとこのような生活にどうしても疎いので、修道院を描いた前半は新鮮な経験だった。

 修道院を出てからの病棟勤務とコンゴでの支援活動と、実務に移っても彼女の献身は続く。だがコンゴの様子はあっさりと表面的なことを取り上げていただけなので、ここは激務の様子や環境のことをもっと生々しく現実的に映してもいいのではないかと思う。病気で苦しむ人々のことも休むことなく続く支援のことも、直接的な表現が無くて説明的な科白だけで済まされてしまっている。これではそこで生活をしながら毎日の支援活動をしているというよりも、数日間の視察に来ましたくらいの捉え方のようだった。
 そして自分のしたい人道支援と敬虔さの狭間に揺れる彼女の決断が、このような道を選んだ一人の女性の生き方を、真摯に映し出していた。主人公の崇高な目的と生き様を観て、今後さらに彼女の歩む厳しい道を想像し、またそれが悲惨な結末になるかもしれないと思いながらも、何となく彼女の下した決断に納得させられる。

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Cape God