肉体の悪魔(1947)のレビュー・感想・評価
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【”禁断の恋物語。”一途に人妻を愛す青年をジェラール・フィリップが演じると、猥雑感なき純愛映画に見えてしまう稀なる作品。】
■第一次世界大戦下、、リセに開設された臨時病院の見習看護婦・マルト(ミシュリーヌ・プレール)は、怪我をした兵士の姿を見て失神してしまう。
その彼女を支えた高校生のフランソワ(ジェラール・フィリップ)。
マルトは出征兵のラコンブ軍曹と婚約していたが、フランソワの情熱に惹かれ、マルトの母や、フランソワの父に厳しく諫められるも、2人は愛しあうようになる。
だが、ラコンブが一時帰還すると2人は別れ、マルトは彼と予定通りに結婚する。
そして、半年後、二人は再会し再び愛し合う。そして、且つて二人が食事をしたレストランで再び食事をするが、フランソワの子を身籠っていたマルトは、無事出産し、その子に”フランソワ”と名付け、戦地から戻って来たラコンブ軍曹の手を握り、”フランソワ、戻って来たのね。”と告げるのである。
◆感想
・後半の展開は、不倫と言っても良いだろう。だが、観る側は猥雑感をあまり感じない。それは、ジェラール・フィリップが演じるフランソワの一途な姿と共に漂う気品や、ラコンブからの戦地からの手紙を破ろうとするマルトに対し、”一通位読みなよ。”と告げる姿や、演出で言えばフランソワとマルトが、同衾するシーンが一切ない事も、起因しているであろう。
・ラコンブ軍曹の視点から見れば、酷い話しではあるのだが・・。
・ラストシーンも、哀切である。マルトが子を出産する場に、フランソワは入る事は許されず、遣るすべもなく塀の外で佇むのみである。
だが、マルトは我が子に”フランソワ”と名付け、息絶えるのであるから・・。
<今作は、ジェラール・フィリップが称える天性の気品が際立つ、若き青年と人妻との恋物語なのである。
人を見る眼が厳しき高峰秀子さんが(彼女の多数のエッセイを読めば分かる。)来日したジェラール・フィリップと出会い、言葉を交わした事で”気にいっちゃった。”と言う位だから、外面だけではなく、内面も相当に魅力的な男性だったのだろうなあ、ジェラール・フィリップは。
そして、彼はこの作品を切っ掛けにして、スター街道を邁進していくのである。>
この邦題だが古典的なラブロマンス
男の方が十代なので初々しいと言った方がいいのか。よろめく女性も20代半ばなので今の感覚だと年取ってるとはいいがたい。ジェラール・フィリップを愛でる映画。
元祖少女漫画のビジュアル
邦題が刺激的な原作小説は未読だが、魅力的な俳優陣によって演じられることにより実写化の意義が高い作品だと思った。
当時24、25のジェラール・フィリップは17歳の役を演ることを心配したらしいが、細面な顔立ちに現れる屈託のない笑顔が眩しくて、彼が演ることによってむしろ主人公は美しく強引であざとく、でも爽やかで屈託がない最強の生きものになった。こんな高校生に言い寄られたら、そこら辺の世間体や倫理観など吹っ飛んでしまうのもやむを得ないような…。結果として女性は「子供を二人」抱えることになるので、その代償はあまりにも高いのだが…。
『肉体の悪魔』とは本の題名にしてもなかなかスゴい(原題は「体の中の悪魔」)。で、そのまま映画の題名にしたのもスゴい。然し昔の映画は“酔わせて”くれる。現代の映画にその感興はないなァ。
①フランス人の友達(30代半ば)が“ジェラール・フィリップはフランスではもう過去の人なのに、日本では出演映画の特集が組まれるなんて”、と驚いていた。
②ジェラール・フィリップは17歳の高校生には見えないが、天才子役でもない限り同年代の俳優ではあのvividな演技は出来ないだろう。
或いは、大人の国フランスとはいえ、17歳の高校生が人妻と肉体関係を結ぶ映画に、当時10代の俳優は流石に使えなかったのか。
あと、この映画のジェラール・フィリップは、後にフランス映画の生んだ希代のイケメン俳優と呼ばれるにはまだ痩せぎすで、それがフランソワのまだ幼く、でも一途な恋愛感情の
タイトルに惹かれて
負傷兵が何人も担ぎこまれてくる病院。マルトは手伝おうとして倒れてしまった。農作業をやらされていた高校2年のフランソワは早速ナンパ・・・おませさん。デートをして「婚約者がいる」と聞いても怯まない。彼女の帰宅後、母親の監視が厳しくなり、やがて結婚してしまったマルト。たった1日の恋だったのに2人はまた惹かれあう。そして戦地に赴いている夫の留守中、フランソワとマルトは結ばれる。
夫ジャックの子を身ごもっても休暇で帰ってくる夫に別れを告げる決心を2人でしたのだが、最終的にはフランソワと別れることになってしまった。母親は意外にも愛人を認めてしまっていることもフランス的なのだろうか・・・そして、ついにマルトが死ぬことに。
今でこそよくある不倫話だけど道徳的にみても問題作だったのだろう。もしかすると死んでいたのはフランソワなんじゃないかと『シックスセンス』的なことも考えてみた。戦争の話を避けたいというフランソワの会話もあったけど、反戦要素は全くなく、むしろ戦争に行った夫を冒とくさえしているような。こんなことが日常茶飯事になったら、誰も妻を残して戦争なんか行きたくなくなるかもなぁ。
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