「人生における納得感」南部の人 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
人生における納得感
サムが小作農を辞め、雇われの工場労働者にもならず、自作農(独立)にこだわるのは、彼が自分の人生に一切妥協せず納得したものにしたいと強く願っているからだ。自分の裁量で全ての物事を決定する。これはリスクも高いが、その分自由ややりがいも大きい。雇われではそれは実現しづらい。つまり、彼は主体性をとても大事にしている。
そう考えると、人生において重要なのは、雇われか独立のどちらが良いというよりは、自分がどういう生き方なら本当に納得できるのか、深く考えて実行することにあるのかなと思う。サムにとっては自作農がその手段だったと言える。
だが現実は厳しい。食料の確保、子どもの病気、冷たい隣人、天災など、心が折れそうになる問題が山積している。夢を追う以前に生きるだけで精一杯という状況。ここまで苦労するなら雇われでいいやと自分なら思うが、それでもサムは妥協しない。今作が秀逸なのは、人生で待ち受ける困難と、それでも前向きなサムの姿に、高いリアリティと希望を感じられる点だ。
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