劇場公開日 1998年5月2日

「設定に少々無理がある」南京1937 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0設定に少々無理がある

2025年5月8日
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第二次上海事変の戦火を逃れて南京に避難してきた中国人男性と日本人女性の夫婦が、追撃してきた日本軍による南京大虐殺に巻き込まれるというストーリーなんだが、そもそも日本人女性が南京大虐殺に巻き込まれるという設定に無理がある。日本人(女性)を被害者の側に置くという展開がこの時期の中華圏の日中戦争映画にはよく見られるが、日本人全体が悪という印象を避けるためと日本人の観客にも被害者側に感情移入してもらうという意図なのかもしれない(あとは日本にも売りたいという商業上の要請か)。しかし実際にそういう例は聞いたことがないし、仮にあったとしても極めて稀なケースと思われ、物語としては不自然な感を免れない。また単純に映画として観ても今一つの出来で、凡作としか言い様がなかった。南京大虐殺を扱った映画として90年代には貴重だったが、今となっては『南京!南京!』や『ジョン・ラーベ 南京のシンドラー』などのようなもっと優れた映画があるので、取り立ててこの映画を観る必要はないだろう。まあVHS化のみでDVD化も配信もされてないので今となってはそもそも観るのが難しいけれど。

バラージ