ナイル殺人事件(1978)のレビュー・感想・評価
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盛者必衰の理を表す
原作小説が1937年(S12)に出版されていますので、本作の時代設定もその頃でしょうか。主人公の女性リネットさんは若さと美貌を兼ね備えた大富豪の完璧超人です。自分の考えをズバズバ述べる強い自我の持ち主です。そんな彼女の唯一の欠点は、男を見抜く目がないこと。友人の恋人であるサイモン君に一目惚れ、横取りして自分の夫にしちゃいます。欲しいと思ったものは力尽くでも手に入れる、そんな女性でしょうか。
リネット&サイモン夫妻はエジプトへウキウキ新婚旅行に出かけます。そして乗り込んだナイル川クルージングの豪華客船で事件が起こります。
晩飯を食うのにわざわざタキシードに着替える紳士たち。イブニングドレスに着飾った若き貴婦人たち。エジプトの遺跡巡りと欧米上流社会のセレブ生活を覗き見ることが、本作を観る楽しみの一つでもあります。それにしても、彼らはどんなでかいスーツケースで旅行してるんでしょうか。
閉ざされた豪華客船に曲者共が乗り合わせます。しかもなぜか全員、リネット殺害の動機を持っている人たちです。元親友の女性が自分を捨てたサイモンに向けて発砲し、事件の幕が開きます。この騒動のドサクサに紛れて、何者かがリネットを射殺します。
元親友:リネットに恋人を寝取られた
女老富豪:ジュエリーに目がなくリネットの真珠のネックレスを奪いたい
看護師:リネットの父に実家を没落させられた
メイド:年上の男と結婚したいのに、持参金もくれないし、仕事もやめさせてくれない
弁護士:管財人としての不正がばれる
医師:インチキ治療と言われ自分の診療所が傾きそう
作家:作品を侮辱され名誉毀損で訴えられた
社会主義者:ブルジョアは死んでよし!
船の中は、リネットを頂点とする完全な階級社会であり、英国富裕層の縮図です。しかもこの船にはたまたま名探偵ポワロが乗り合わせています。作家や探偵は「成り上がり者」として下に見られます。こんな環境下で完全犯罪は成功するのか?もちろんうまくいきっこありません。
・犯人は犯行に使った拳銃をナイル川に投げ捨てますが、なんと救い網に引っかかって回収!船は進んでいるはずなのに…。
・ポアロさんは耳が良すぎて乗客たちの会話はすべて筒抜け!
・あんな狭い船の中で犯人は走り回って殺し回ってそりゃ、見られるわ!
・「完全なアリバイ」を目論んだのに、目撃者がおり、しかも金を強請られます。
・一見よくできた計画のように見えますが、よく見ると偶然任せのずさんな計画!
・「脚を撃たれた」者を放置して一人にすることはしないはず!
本作は、上流社会の住民たちの一見華やかな見せかけの底に蠢く生臭い欲望を剥き出しにし、恐ろしいのは人間の嫉妬と欲望であることを教えてくれます。「持たぬ者」の男女が共謀して「持つ者」を殺し財産を奪うという事件の計画には、持たぬ者の悲哀を感じます。大英帝国繁栄の象徴というべきリネットは頭を撃ち抜かれました。また、大英帝国はこの後の第二次世界大戦でさらに没落していくことをわれわれは知っています。盛者必衰というか無常というか。ポワロも結局5人の死を未然に防ぐことは出来ませんでした。
社会主義者の若い男、ジェームズ・ファーガスン。原作者はこのキャラクターに何を託したのでしょうか。ブルジョアジーの船旅に参加するくらいですから金は持っているのでしょうが、全く場違いで一人浮いています。金持ちたちの欺瞞を暴くわけでもありません。最終的に美しい恋人をゲットしにこやかに船を下りていきます。唯一俗物ではない登場人物ですが、何らかの政治的意図があったのでしょうか。
ミア・ファローを中心に見てわかったこと
登場人物が多くて誰を中心に、あるいは誰に感情移入するかによってこの映画の印象が変わると思う。もちろんミステリー映画なので普通はポアロだろう。ただ、私はもともとミア・ファローのファンだったので、ミア・ファローを中心に見た。それで分かった事は、この映画は
ミステリーでもサスペンスでもなく、(そのような体裁をとっているが)純愛映画だった。
最後に、事件はミア・ファローの愛が発端だったと分かったとたん、この映画が私にとっては ミステリー映画から素晴らしい恋物語に変貌した。事件の前に、デッキで一人で佇んでいるミア・ファローが寂しそうだったのをはっきりと覚えている。ラストを見た後このシーンのことを思い出すと、感慨深いものがある。この時何を考えていたのだろうかと。
ミア・ファローは決して美人ではないが、何か惹きつけられるものがある。
この映画は、ミア・ファロー出演作としては、「フォロー・ミー」の次に好きな映画である。
ナイルに死す
『ローズマリーの赤ちゃん』でのやつれたメイクがそのままミア・ファロー。そりゃ、婚約者を紹介した途端に成金お嬢さんに奪われちゃったんだもんなぁ。そして静かに見守るポワロ。
ナイルくだりのカルナック号に乗り込んだ豪華俳優陣。リネットに恨みを持つ者が非常に多い。彼女の父に破産させられたバウワース(スミス)、小説のモデルにしたことで名誉毀損で訴えられそうなサロメ(ランズベリー)、アンドリュー叔父(ジョージ・ケネディ)、働いた金を要求するルイーズ(ジェーン・バーキン)などなど・・・。そして最も恨んでいそうなジャクリーンはカルナック号に乗船できなかったが、リネットたちを脅かす存在だ。
最初に訪れた神殿で石が落ちて来るピンチ。その後のアブシンベル神殿でジャクリーンと再会。彼女もちゃっかり乗船してくる。そして、ディナーの後、携帯していた短銃でジャクリーンがサイモンの足を撃ってしまい、その後リネットが殺される。動けないサイモンと、ずっと付き添っていたジャクリーンが最も疑わしくない人物となるのだ。
以前にも観てるのに思い出せないもどかしさ。疑わしくないジャクリーンが犯人だろうと先入観で見ていてもトリックがわからない。赤いマニキュア、ダイイングメッセージの“J”、見つかった短銃・・・ヒントを繋ぎ合せることができるのはポワロだけだ。やがて、犯人を恐喝していた節があるルイーズが殺され、それを目撃していたサロメも殺される・・・
終わってみると、ずっと貧乏だった者が純愛を通したことが判明し、まさしく悲劇・・・。ポワロの明快な解説に惚れ惚れと聴き入ってしまった直後の出来事だ。原作ストーリーの秀逸さもあるが、名優ばかりを使ったことも大成功。まんまと感動させられてしまいました。というか、ところどころのシーンを覚えているということは、何度見ても満足する映画なんだろうな。
船上密室…消化不良な脳細胞
ポアロシリーズ(ピーター・ユスティノフ版)第1作。
レンタルDVD(デジタル・リマスター版)で鑑賞(字幕)。
原作は未読です。
やっぱりアルバート・フィニーのポアロしか勝たん、と思いました。なんとなく、本作のポアロは"灰色の脳細胞"と云う感じが全くしなかったんですよねぇ…
ナイル川を航行する船内で発生した密室殺人事件。こぞって怪しい容疑者たち。ストーリーとミステリーの基本構造は「オリエント急行殺人事件」と似通っていました。
エジプトでのロケはあったものの、物語の特性上セットの中で殆どの撮影が済んでしまうし、何よりそこで節約した予算を豪華なキャストの出演料に回せるから、贅沢なミステリー大作をつくるには持ってこいの題材だなと思いました。
予想を裏切るトリックと犯人の正体に度肝を抜かれました。
ですが、「オリエント急行殺人事件」のような面白さは感じられず、どこか消化不良な印象でした。
[余談]
デビッド・ニーブンがカッコいい!
ダンディズムにシビれました…
※修正(2022/03/02)
よくできてる
ミステリーとして良くできてますね
割と展開としては王道なんですよね。
全員動機があって、あからさまに怪しいのがいる。
だけど…
ちょっと推理は強引な気もしますが、
それでも十分楽しめる作品だと思います。
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