「大味な物語、しかし完璧にかっこいいブルース・リー。」ドラゴン危機一発 すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
大味な物語、しかし完璧にかっこいいブルース・リー。
⚪︎作品全体
70年代から90年代くらいまでのカンフー映画にしかない魅力っていうものがある。
根底にはカンフーアクションと主役を見せるっていう大きい土台があって、そのうえにストーリーや登場人物を置いていくような作り。でも土台さえあればあとの盛り付けは大味で、誰かを救い出したり、その作戦なんかは非常にざっくりしている。でもそれで良いのだ。見せたいものが魅力的ならば。
本作もそのテンプレートに当てはまる。まるでブロックを組んでいくように、土台の中にどんな形であれ他の要素がはまっていれば良い、というような作りだ。
土台はもちろんカンフーとブルース・リー。序盤はジェームス・ティエン演じるホイのアクションが光るが、それもリーの前座というブロックの一部分でしかなく、リーが戦う理由として存在している。ヒロインや売春婦もそれぞれの持つ清涼感と色気を放つために存在しており、テンプレートに沿って存在してるように見えた。
仲間も皆殺しになってしまうのは想像以上だったが、母親との約束を破ってまでの戦う理由としては良い動機づけだった。
…と、なんだか冷めた感想みたいになってしまったが、むしろ私はこれで良いと思う。土台の上にある要素はあくまでもカンフーとリーのためにあるのだ。リーの類稀なるカンフーアクションを繰り出すためには、それ相応の理由づけが必要で、一方でそっちに比重を置いてしまっては今度はリーがもったいない。
そういう意味ではリーのアクションの前座としては、どれもこれもがちょうど良い。70年代から90年代のカンフー映画には、「大味ながらもちょうど良い」があるのだ。
リーのアクションは見事の一言だ。一発の重さ、身のこなしの速さ、ポージングのかっこよさ。ところどころで超人的なジャンプを繰り出すのは少しチープだが、骨太なアクションをしっかりと映すカットには目を奪われる。リーのカンフーにはカメラワークという小細工は不要なのだ。
似たようなシチュエーションのアクションが続くものの、飽きがこないのはやはりリーの力だ。彼がそこに立つだけで、全ての拳と蹴りが伝説へと変わる。
⚪︎カメラワークとか
・場面転換でスカッシュっぽいの使ってて無駄にかっこよかった。
・ジャンプするときにあおりのアングルで映すやつ、ダサいなあ。戦隊モノとかでもあるあるだけど、あれをかっこいいと思ったことがない。たとえ超人的なジャンプだったとしても、あれで凄さは感じないと思うんだけどなあ。
・リーのアップショットが全然なくて、リーのかっこよさへの信頼感がない気がする。
⚪︎その他
・ギャグっぽい要素が多い。胸元のアクセサリーを見るたびにお母さんを思い出し、流れるメロディ。天丼ギャグっぽい。騒動の結果、主任になったときにウキウキで帰ってくるリーたちは意味不明すぎる。なんでホイたちが帰ってこないことを理由に騒動を起こしたのに。
・売春婦が工場長たちがヤクに絡んでるっていう証拠を見せるための胸元を見せるところ、サービスカットすぎてもう良いよってなった。
