「オープニングもラストもいいけど。裏話はチョットねえ…」友だちのうちはどこ? osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
オープニングもラストもいいけど。裏話はチョットねえ…
子供の映画は好みでないので(例外は、アラン・パーカー『ダウンタウン物語』くらい)これが最初だったキアロスタミはずっと観てこなかったが、つい先日、観てしまった『桜桃の味』が諸々とても素晴らしかったので、ついに本作も今頃になって観てしまった次第。
さすが元グラフィックデザイナー。
今回も構図が完璧。
オープニングの淡く擦れたブルーのドアからラストの瞬間まで全てのショットが素晴らしい。
ラストも小粋なミニマリズムという感じで、思わず心の中で喝采してしまった。
芝居の方も皆んな素人なのに(素人ゆえか)ドキュメンタリーみたいに自然だ。
しかし、子供映画が苦手な人にも間違いなくお勧めか?というと、実はそうでもない。
まず、そもそもの設定&プロットに少し難がある。
あの賢そうな坊や8歳(日本だと小2か小3)であれば、電話が無いとはいえ、もっと知恵も働いて、直ぐ学校に戻り、先生に事情を話すなりして、一件落着になりそうだ。
あういう設定で、どうしても走れメロスやりたいんだったら、せめて6歳くらいでないと。それに4〜5歳だって賢い子は知恵も働くだろうし、やっぱり主人公は賢く見えない方がいい。
あまり賢くは見えないが、友達には義理堅い。そんなキャラでないと、あの設定には合わない。
たぶん、あの主人公の子供の正直そうな真っ直ぐな眼を見て、一発で気に入ってしまったのかもしれないが。
であれば、それならそれで、例えば、
あの子は機転を利かして、慌てて学校に戻ったが、運悪く先生はバイクで帰って行こうとして、そこを必死で追いかけるが、声は届かず… 更に他の先生達に助けを求めるが、忙しがって相手にされず…
などであれば、
あの賢そうなキャラとの整合性も取れ、過酷感も増し、いよいよもって「友だちのうち」を探さなきゃいけない… という切迫感も増して、更に良かったと思う。
それにしても、子供達の演技が、あまりにもリアルだったが、現場では、かなりエグい事をやっていたようで…
特に冒頭の方の泣かすシーンでは、子供の人権なんて知らんわ!と言わんばかりの非情さで、子役俳優でもない素人に、随分な事をしていて、
あの主人公役の子の弟だったらしいが、人間不信にでもなってなきゃいいが…
当時のスタッフも現在は反省してるようだが、コッチは種明かしされしまって、すっかり引いてしまった(お勧めしないが、どうしても気になる方は、ポチッと検索どうぞ)
ホントこういった裏話は、あんまりベラベラ喋らん方がいいと思う。特に本作のようなドキュメントタッチの場合には。
しかし、こんな部分もイランのクロサワと言われた所以なのかもしれない。
やっぱり、本物のリアリズムを虚構の上に作り上げるには、殆どやりすぎ(黒澤明の場合は殆ど狂気)と言えるほどの、それ相応の厳しさは必要みたいだ。
とはいえ、素人の子供にやっちゃ、流石にイカんけどね。