トパーズ(1969)のレビュー・感想・評価
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巨匠の最後期の作品群をどう見るか
才能が枯れたのか、それとも、さすがの巨匠も老いには勝てなかったのか。ヒッチコック70歳の節目に公開された本作は、お世辞にも良作と言えない代物だ。もともとスパイ物はヒッチコックにとってお得意の一手だったはず。とりわけ30年代の『三十九夜』などは、その後の同ジャンルの基礎を築いたと言っても過言ではない。しかし、あれほど「映像で語る」ことに長けていたはずの彼が、再びスパイ物へ舞い戻った『引き裂かれたカーテン』『トパーズ』ではすっかりストーリーに振り回され、時代遅れと化している感が強い。これらの作品が生まれた60年代といえば、ちょうど007シリーズが世に出て、あらゆるスパイ映画の常識が一変した節目。ヒッチコックがこの後塵をどれほど意識したかは分からないが、あえて007とは真逆の、リアルな諜報戦を描くやり方を貫いたのだとすれば、それはむしろ巨匠の矜持が窺える”攻めの一手”と評するべきのかもしれない。
ヒッチでなければそこそこのスパイ映画
実際のキューバ危機を題材にしたフィクションです。
二重スパイあり、どんでん返しありでそれなりにサスペンスな作品ですが、ヒッチを期待すると外れます。
妙にシリアスでいつものユーモアが皆無。映像技術ではなくストーリー勝ちなところがヒッチにしては異色、というか評判が低い要因でしょう。
ヒッチコックという先入観を捨てて観れば大変に良くできたスパイ映画だ
007シリーズの大当たりを前にして、ヒッチコックが本物のスパイ映画の手本を見せてやろうと言う意欲を感じる
ヒッチコックには珍しいユーモアもウイットの一かけらも無い、シリアスかつシビアな内容
肌合いは劇画ゴルゴ13に近い
スパイの情報の受け渡し手法、各国情報機関同士の関係性など極めて正確な取材に基づいたもので後年のフォーサイスのスパイ小説を思わせる
ヒッチコックの映画に抱くパターンを期待して本作を見ると欲求不満になるだろう
しかし、ヒッチコックという先入観を捨てて本作を観れば大変に良くできたスパイ映画だと評価が別れるだろう
流石はヒッチコックと唸るシーン、ショットも多い
花屋の温室、大通りを隔てたホテルのロビーでの言葉が聴こえなくても観客に意味を通じさせるシーン
キューバの美人スパイの死のシーンを真上から撮り彼女のドレスのスカートが血糊のように広がるショット
これらは特に印象深い
1962年秋のキューバ危機を巡る米ソ仏のスパイの物語
主人公はフランス情報部のワシントン駐在員
容姿は二代目ジェームス・ボンドのジョージ・レーゼンビーを思わせる
当時フランスはまだNATOに加盟していた
脱退したのは本作の時代の4年後1966年のこと
そして2009年に復帰している
それだけの時月が流れ去った
だから、この物語は半世紀以上昔の物語に過ぎないのだろうか?
冒頭のモスクワの軍事パレードはつい最近北京や平壌であったものと瓜二つ
キューバ危機は北朝鮮の核危機と相似形だ
同じ物語が今日本であってもおかしくないのだ
本作は半世紀の時を超えて現代性を帯びてきたのだ
ヒッチコックのスパイ映画
確かにスター不在だし、序盤は主人公どこいるんだ?
と首をかしげてしまいましたが、
ヒッチコック節を感じさせるOPの斬新なカットと
手に汗握る演出はさすが!
一般的に後期のヒッチコック作品は評価が低いようですが、
私個人は、ぐいぐい引き込まれました。
ラストの強引な編集がなければもっと評価されていたのでは?
89点。
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