「雪原を渡る光たち」ドクトル・ジバゴ(1965) えふいーねこさんの映画レビュー(感想・評価)
雪原を渡る光たち
高校の時の友人に、この映画が好きだったために大学をロシア語科に決め、北海道に行ってしまった人がいます(女性です)。とにかくラーラが綺麗、大好き!とのことでした。
私がドクトル・ジバゴを観れたのは20代になってからで、はじめあまりピンとこず、でもその後観る機会が来るたびに観て、今では大好きな作品です。
煎じ詰めれば不倫の話、なのですが、清濁併せ呑んで壮大に清冽、というか…とにかく凄い。デビッド・リーン節にやられてしまう。
ジバゴとラーラが再会する(してしまう)場面の、ラーラの目元にだけサッと光が差している、見てはいけないような美しさ。
あってはならないのに会ってしまった、二人の心象が仄暗い中の一条の光に集約されているようでした。
ずっと後に、「キャプテンアメリカ・ウィンターソルジャー」を観た時、暗い台所にウィンターソルジャーがひっそり座っていてその目元にだけライトが当たってるシーンがあり、「なるほど、美人にだけ許されるライティングなのだな」と思ったものでした。(すみません)
雪原の果ての、氷に閉ざされた屋敷も美しい。スコーンと左右にひらけまくった、無慈悲なくらい広大な景色ばかりなのに、曰く言い難い叙情があって、何度観ても溜息が出ます。
「もー、男ってやつぁ!!」と言いたくなる場面もたくさんあるんですが…。
今回再見して、以前には印象薄かったジェラルディン・チャップリンがとても良い、と気が付きました。こんないい奥さんいないよ…でも、こりゃ男の都合の良い願望だね〜と切捨てられない奥行きがある。デビッド・リーンだから仕方ない。
物語も人物も幸福度はとても低いと思うのだけど、それぞれの運命を見送って後味はなぜか爽やか。最後のバラライカのお陰かもしれない。
余談
これを書いてて、ロシア語科に進んだ友人からの誕生日プレゼントが「ラーラのテーマ」のオルゴールだったことを思い出し、それ私にじゃなく、彼女が自分に欲しかった物じゃないかと今更気が付きました。元気かな。