劇場公開日 1966年6月18日

「原作がソ連作家によるノーベル文学賞受賞の反共的作品だったとは…」ドクトル・ジバゴ(1965) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0原作がソ連作家によるノーベル文学賞受賞の反共的作品だったとは…

2025年3月9日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

デビッド・リーン監督作品としては、
「アラビアのロレンス」や「戦場にかける橋」
より格下に観ていた作品だが、
同様の印象を持っていた「ライアンの娘」を
昨年観て、間違った認識であることを悟り、
この作品の評価変えも期待して再鑑賞した。

実は、かつての鑑賞ではこの作品には、
主人公の主体性の無さや、
時代に翻弄されただけの人生に
物足りなさを感じていた。

さて、今回改めて気になったのが、
作品全編に漂う反共描写。
・平等と称して、それまでの事情を無視
 した上での資産家の屋敷を完全シェア
 しようとする革命軍の姿勢
・各場面に登場する革命軍側連絡員等関係者
 の非人間的発言
・ジバゴの自由風潮的な詩への国内批判
 があるとした場面
・革命軍兵士に虐殺される白衛軍を
 主に少年兵での構成にして
 その残虐性を強調する設定
等々。

原作はソ連作家が書いたものなので、
この反共的内容は問題無かったのだろうか
と思ったが、
実はイタリアで刊行せざるを得なくなる中、
ノーベル文学賞受賞までいったものの、
原作者は国内に留まるために受賞を辞退した
とネットの情報を目にして納得出来た。

さて、懸念だった点だが、
ドラマの途中で革命軍兵士が
ジバゴに投げかける言葉、
“時代に適合するんです”
との台詞も出てくることもあって、
ロシア革命という大きな時代のうねりの中で
それでも懸命に生きた点については
理解出来たが、
ラーラと共に、それ以上の域は出ていない
主人公らに感じてしまい、
「ライアンの娘」の夫婦二人への
共感までには至らない鑑賞と
なってしまった。

KENZO一級建築士事務所