劇場公開日 1966年6月18日

「音楽と美術の力」ドクトル・ジバゴ(1965) 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0音楽と美術の力

2025年2月24日
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鑑賞方法:映画館

デヴィッド・リーンのインターミッション付き3時間半の大作を映画館では初鑑賞。
まず、開巻の序曲、有名なラーラのテーマをはじめ、モーリス・ジャールの音楽が、劇伴という概念を超えてドラマを高揚させる。そして、モスクワ市街のセット、舞踏会場、擬装された大雪原、氷の邸宅など、美術の素晴らしさ。ワイド画面を活かしたロケーションとともに、音楽と美術の力によって、映画館で観るべき映画として成立させている。
物語としては、ジバゴとラーラが出会うまでが意外と長い。二人が親密な関係になってから、ジバゴが妻とラーラの間で揺れる姿が優柔不断にも見えるので、そこはもう少し丁寧に時間をかけて描いてくれてもよかった。パルチザンから逃れて雪原をさまようジバゴの悲壮感は、圧巻。
オマー・シャリフ、ジュリー・クリスティはじめ、出演者のほとんどがイギリス系で、ロシア人っぽく見えないが、制作当時の状況から致し方ないのだろう。あらためて観ると、ロッド・スタイガーとトム・コートネイが、役柄のアンビバレントさもあって印象深い。
終幕前の、ジバゴがラーラを追いかけて心臓発作で倒れる有名なシーンは、彼がラーラに似た別の女性の姿に彼女を重ね合わせた(つまり、本物のラーラに出会うことはなかった)と読んだ。

山の手ロック