劇場公開日 1966年6月18日

「奇跡の超大作」ドクトル・ジバゴ(1965) かばこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5奇跡の超大作

2025年2月16日
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鑑賞方法:映画館

昔リバイバルで見た時は、映像と楽曲の素晴らしさに圧倒されたがストーリーは壮大な不倫メロドラマ、としか思わなかったが、もしかするとカット版だったのかも

「午前10時の映画祭」で、数十年ぶりくらいに大きな画面で見たら印象が違った。

大きくうねる時代の波のスペクタクルと、それに翻弄される人々の小さな世界が拮抗して描かれている。

暗くなった場内、スクリーンは暗いままで流れる5分を超える序曲。
「アラビアのロレンス」でもそうだが、このオープニングで映画の世界に導入される。
これだけ音楽が壮大なのに、それにガッツリ噛み合って負けないスケールの映像、CGないので大自然を撮影しセットを組んで、群衆は集める人海戦術。インターミッションが入るゆったりとしたつくりはまさに古き善き「超大作」。今見ても遜色ないどころか、今では作れない貴重なお宝みたいな作品と思う。見られてよかった。

デビッド・リーンは、「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス」で男性的な映画を作る監督のイメージついていて(私も)その気分で見ると期待と違う方向性で肩透かし食らったようだが、もともと「逢引き」とか「旅情」とか恋愛ものをよく撮っていた監督だった。「アラビアのロレンス」みたいなセリフがある女性が一人もでてこない映画のほうが特殊だった模様。

ラーラも映画のスケールに負けない。どこから見ても美しいし、一途でいつでも一人の男性のみを愛しており、媚びない。
力ある男たちは彼女の心には他の男性しかいないのを知ったうえで好意を寄せずにはいられない。
強制収容所で行方不明になり、以後消息不明というラーラ、きっと生き延びたんだと思う。
収容所の力ある人に好意を寄せられて、消息不明ということにしてそっと逃されたんだと思います。

時代の荒波では人間の営みはちっぽけすぎて歴史的には歯牙にもかけられないものだろうが、そこでちっぽけな人間たちは懸命に生きている、その対比も感動的。

私が見た「午前10時の映画祭」の映画館は、映像が4Kだけでなく、音も大変よく、暗いままのスクリーンでの序曲、から流してくれるありがたさで、良い環境で堪能させてもらいました。

この映画は是非是非映画館のスクリーンで、そして音も良いところで観るべきです。
でないと真価がわからないと思います。

ジュリー・クリスティーは、ロレンス=ピーター・オトゥールに似ている。
細面で金髪に青い目、小鼻がちょっと張っていて、ぽってりした唇が少し肉感的な感じがする。目の部分だけ光を当てるライティングでみたら、どちらかわからないくらいだと思いました。

かばこ
いなかびとさんのコメント
2025年2月18日

コメントありがとうございます。
ジュリー・クリスティ、本当に綺麗です。
ドレス姿の場面、結構胸が豊かで驚きました。何故、ラーラは母の愛人であるコマロフスキーに抱かれたの。ラーラはコマロフスキーに父親を、ジバコはラーラに母親を求めていたんだと納得しました。リーン監督はそれをわかっていた。

それと、ジバコは自然から詩想の霊感を受けるタイプの詩人だった。ロシア革命で革命政府は何人もの著名な詩人を殺しています。マヤコフスキーもそうです。パステルナークも監視対象の詩人でした。その代償は大きくソ連政府が樹立してから、私が知る限り世界的な偉大な芸術家は誕生していません。トルストイやドフトエフスキー 、チェーホフ、チャイコフスキーやショスタコービッチを生んだ国なのに。みな、ロシア時代に誕生した創作者です。シャガール、カンデンスキー、ストラヴィンスキー、プロコフィエフ、ホロヴィッツ、リヒテル、ムラビィンスキー。凄いメンバーです。

いなかびと
トミーさんのコメント
2025年2月18日

共感&コメントありがとうございます。
まだ乙女だったラーラがビクター(ここはビクトルじゃないのか)に身を任せていく出だしからヤラレますね。ユーリも奥さんと苦難をくぐり抜けて来たのに転ぶ、観てる方もああ~仕方ないなぁと思わせる説得力ですね。

トミー
トミーさんのコメント
2025年2月17日

たまには、こういうメロドラマ大長編もイイですよね、邦画だと浮雲のイメージです。

トミー
いなかびとさんのコメント
2025年2月17日

全くの同感です。壮大な不倫メロドラマ。でもトルストイの「アンナ・カレーニナ」だって不倫の物語です。かって日本の男優が「不倫は文化だ」と言って物議を醸しましたが、それを文化にまで昇華させるのは、芸術家の仕事だ。ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」を作曲する根底には、パトロンの妻への不倫が関わっている。

いなかびと
Mさんのコメント
2025年2月16日

序曲よかったですね。あの長さに圧倒されました。確かに気持ちが映画に入っていく気がします。
個人的な感想は、最初に抱いておられた「壮大な不倫メロドラマ」に近いのですが、それだけではない古き映画の香りを感じることができました。

M