劇場公開日 1988年2月27日

「合法な不正義を潰すのは市民運動しかない。日本はどうする?」遠い夜明け はんぱかさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5合法な不正義を潰すのは市民運動しかない。日本はどうする?

2023年7月11日
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鑑賞方法:VOD

興奮

知的

これは、アパルトヘイト時代の南アフリカが舞台である映画です。1987 年に制作されました。南アフリカは、今でこそ BRICS の一角を占めますが、制作当時は、国際的に経済制裁を受けていて、オリンピックにも出られませんでした。その理由は、アパルトヘイトです。
アパルトヘイトとは、南アフリカの人種隔離政策のことです。政府は、白人だけから構成され、大半の黒人を狭い居住区に押し込めていました。日本では、中学校の社会の教科書にも、アパルトヘイトが紹介されていたため、当時は広く知られていました。この映画が公開された数年後に徐々に差別制度が緩和されていきました。そして、1994 年、全人種による選挙が行われ、弁護士、反アパルトヘイトの闘士で長く獄中にあった、黒人のネルソン・マンデラが大統領に就きました。現在(2023 年)、40 代以上の人は覚えている人も多いでしょう。
さて、映画に話を戻しますと、これは実話に基づく物語だそうです。登場人物はほぼ実名とのこと。
1977 年、スティーブ・ビコは、南ア政府の保安規則により、移動や面会の自由が制限されていました。彼は、黒人解放運動の指導者で、非常に知的です。ドナルド・ウッズはリベラル紙の編集長で、初めはビコを批判していましたが、次第に彼を支持するようになります。
この作品は、事実上、二部構成となっています。第一部に相当する場面では、アパルトヘイトの圧政、それにビコが反対して運動を起こし、政府はそれを弾圧し、ウッズも新聞を使って政府を批判します。第二部に相当する部分は、ここで詳細は伏せますが、打って変わってハラハラの逃避行です。それが避けられないことは第一部があるからこそ伝わるものです。是非、作品を観てください。
この作品には、正義には悖[もと]るけれど、合法な警察や裁判所が何度となく現れます。冒頭で、白人警官が何台ものトラックで黒人居住区のバラックを襲撃し、女子供の区別なく彼らに暴行し逮捕監禁します。こういうことが頻繁に起きる事が暗示されます。政府からは、この悪行が「公衆衛生上の保護」として合法だと発表されます。暴力は隠蔽され、白人の国民は差別に負い目を感じなくて済みます。こうして、不正義が適法として処理されてしまいます。
ところで、これは、遠いアフリカの昔話に過ぎないのでしょうか。僕は、そうではないと思います。例えば、公金を権力者やその縁故に流用したら、それが法的には問題なくても、不正義でしょう。罪を犯したのに、それが権力者に近いと言うだけで罰せられなければ、その手続きがいかに適法でも不道徳でしょう。こんなことが続くと、社会は壊れてしまわないでしょうか。と言うか、壊れ始めていますよね。
南アフリカでは抵抗運動が差別を終わらせました。日本はどうでしょうか。

はんぱか
りかさんのコメント
2024年1月11日

こんばんは♪
大変参考になりました。
ありがとうございました😊

りか