遠い声、静かな暮しのレビュー・感想・評価
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リバプールの記憶
テレンス・デイヴィス監督の自伝的要素のある映画で
1940〜1950年代のリバプールのカトリックの労働者階級の家庭生活が描かれている
物語の父親の過度な厳格さと暴力の原因が
はっきりとはわからないが
監督自身は無神論者になってしまっている
この父親を演ずるポスルスウェイトと
忍耐強く愛情深い母親役のダウィが、やっぱり印象的だった
娘のひとりが彼氏に CHANEL N°5 を送られて
友達とほっこりする場面が可愛らしかった
モンローが眠る時はこれをつける、と言っていた頃か
港町は流行が早いのだろう
そして音楽も
この映画では世相や人々の心象を表すものとして曲が多用されていた
母親が暴力を振るわれるシーンで
Taking A Chance On Love (Ella Fitzgerald) が流れてくるのが切ない
出会った頃とは別人のような夫との暮らし
In The Bleak Mid-Winter を背景に
ツリーを飾り 子供の寝顔を見つめる彼の姿は優しげなのに
馬の手入れをしながら アイルランド人の歌を歌っているので
アイルランド系かな?と思ったが
さらにその親族を見て確信する(笑)
リバプールは重要な港湾都市なので移民も多方面から流入
戦争では狙われ、空襲も激しく
苦しい日々が続いた
馬小屋さえあれば…という詞も非現実的に思えてくる
心も荒む…
このあとビートルズを生み出し
今では多文化共生都市の成功例として語られるが
それまでの長い住民の苦節、心の変遷のようなものが
映像と監督の選択した曲の数々に感じられた
劇中でも名曲と言われている
IWanna Be Around は
洒落た曲だと思っていたが
ここでは恨み節的に使われていて
興味深かった
息子が結婚式で泣いていたのは
こんな世情で家系を繋いでゆく重圧(苦労)から、だろうか
英国で評価が高いのが、理解できる
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