「タランティーノの積年の妄想が滲む、いや爆発する! 本作の全てが好きです。」トゥルー・ロマンス さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
タランティーノの積年の妄想が滲む、いや爆発する! 本作の全てが好きです。
「ねぇ、うちでソニー千葉のカンフー映画観ない?」
そんな誘い文句、初めて聞きました(笑)
クラレンスって、カンフー(空手)映画オタクなんです。
映画館でアラバマにポップコーンをこぼされる出会いから、
「ねえパイ食べない?映画の後にはパイが食べたくならない?」
って、もうアラバマ(パトリシア・アークエッド)、可愛いさしかないですからね!
ミッキー・ローク好き。
エルビスの声好き。
カンフー好き。
パイ好き。
で、ペルシャ猫が嫌い。
この会話だけで、アラバマの人物像ができあがります。こういうの、タランティーノ巧いです!ほんと、感動します。
そうなんです。本作には沢山の登場人物が出てきますが、それぞれのキャラに魅力があるのは、こういう少ない会話でも想像力を膨らませるタランティーノの巧さ&トニスコ監督の細かいカット割り職人技の、絶妙なマッチ感だからだと思う。
すみません!かなり暑苦しいと思いますが、このテンションで最後まで爆走します。宜しくお願いします。
そんなアラバマは娼婦で、コミック店のボスからクラレンスへの誕生日プレゼント。
ひと晩過ごした後、アラバマは急に「娼婦から足を洗う!」って宣言します。
この時のアラバマも可愛いんです!
「4日で3人だけ!使い古しじゃないのよ。私はホワイトトラッシュじゃない!真面目な女よ。好きな人ができたら、一人の男に尽くす女。好きになった男以外、他には目もくれない。好きな人に100%尽くす女よ。ひと晩で馬鹿みたいだと思うかも知れないけど、貴方を愛してしまったの」
熱弁(笑)
童貞感ハンパないオタクが、ひと晩で可愛い娼婦を落としてしまうんですよ!
なんという、童貞のポテンシャル!なんという、厨二!
本作は25歳まで彼女がいなかった、タランティーノだから書けたんでしょうね。きっとこのバイオレンス・ラブなお話は、彼のユートピアなんです。
私の好きな作家の奥田英朗先生は、作者が作品に滲み出るな、作者は引っ込んでろ、読者は作者に全く興味がないと頭に叩き込め!と仰いましたが、本作の場合は滲み出て正解です。
いや、タランティーノの作品は、全て彼の「悶々」から生まれていると言っても過言ではありません。そこが好き。
本作も、テレンス・マリックせんせの「地獄の逃避行」1%オマージュ、99%は彼女がいない時代のタランティーノの「悶々」でできていると思う。
でもそう考えると、なんだか、もろもろ感慨深いです。
伝わらないことを承知で書くんですけど、アラバマの「100%」って言い方が可愛いんですよ。「好きな男には100%尽くすのよ」って。100%の「パッセッン(ト)」これ、よく真似します。
ドリュー・バリモアの「テンキュァ」くらい可愛いんです。あ、これも真似します。けど今のところ、アメリカ人にウケたことがはありません(笑)
アラバマみたいな女性になりたかった。安っぽい服を着て、セクシーでキュートで、いつもニコニコしてて優しくて、知識はないけど、知恵はある。本当に一人の男に尽くすから、拷問されても口を割らない。しかもぼっこぼこにされても、反撃のチャンスを狙って逆転します。クラレンスといつもべたべたして、ちゅーばかりしてます。
アラバマ可愛い。大好きです!
そんなアラバマとクラレンスは電撃婚。でも、問題が!アラバマのヒモ(ゲーリー・オールドマン)です。
たまに出て来る、神的存在のエルビス・プレスリーが、実は1回目では気付かなかったヴァル・キルマーです。
エルビスがクラレンスにいうんです。アラバマのヒモを殺せって「YOUやっちゃいなよ」って。エルビスは、こんな感じでちょいちょいクラレンスの背中を押してきます。
クラレンスがヒモを撃ち殺して帰宅。アラバマのリアクションが、また素晴らしい。
私の為に殺したなんて……(泣)
私の為に殺したなんて……(泣)
「SO ROMANTIC !! 」
実はこのシーンが、全ての映画の中で一番好きです。ええ、全てです。
そしてここ、よく真似します(笑)でも、殆どの人に分かって貰えません。
その他、出演者が豪華です。
クラレンスの父親役にデニス・ホッパー。
マフィアにクリストファー・ウォーケン。
ポン引きにゲイリー・オールドマン。
ドラック中毒にブラッド・ピット。
エキストラ的扱いのサミュエル・L・ジャクソン。
変装が凄すぎて分からないヴァル・キルマーなどなど。
このデニス・ホッパーとクリストファー・ウォーケンが対峙するシーンが圧巻。デニス・ホッパーの長台詞は、実はアドリブ。このシーンよく観ると、ウォーケンが本気で困っているのが分かります。
「シシリアは何百年も前にムーア人によって征服された。ムーア人は黒人だ。ムーア人は白い肌と碧い目の女とだけF○CKした。だからシシリア人には黒人の血が流れている……(略)you are black eggplant!」
デニス・ホッパー格好いい!そしてこの話でブチ切れて、1984年ぶりに人を撃ち殺す、クリストファー・ウォーケン。そのメンタリティについていけないけど……、同じく格好いい!
「black eggplant(黒ナス)!」、
「cantaloupe(マスクメロン)!」
の後に、ウォーケンは何発もホッパーに撃ち込む。マスクメロン!で殺すとか。
二人の俳優のセンスが、素晴らしい。「ヒート」で、アル・パチーノとデニーロが対峙するシーンより、断然凄いと思う。
タランティーノは、クラレンスとアラバマが撃ち殺されて死ぬラストを考えていたようです。その場合、二人は自由を求めてないと成立しないですよね?ええ、勿論アメリカンニューシネマの刷り込みですよ。
でもトニスコ監督の万人受感と、タラ汁がいい感じにミックス&シェイクされた、幸せでほのぼの感のある素敵なラストなんです。
本当は「You're so cool!」とか、「死体袋の帰還兵」とか、色々語らなくちゃいけないことがあるんですが、ここまでで原稿用紙4枚です。さすがに、そろそろ終わろうと思います。
あれ、クリスチャン・スレーターに全く触れてなくね?
そうなんです。本作ではクリスチャン・スレーターの見せ場ってないんですよ(笑)なので彼のことは、「フラッド(1998)」ででも語ることにします。多分。
では、長々とお付き合いくださり、テンキュァ!