劇場公開日 1998年11月14日

「現代メディアにも通じる問題提起を含んだ良作」トゥルーマン・ショー セッションさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5現代メディアにも通じる問題提起を含んだ良作

2020年6月18日
iPhoneアプリから投稿

もし、自分の人生がカメラに監視され、全世界に向けてテレビ放送されていたら?

そんな奇想天外な設定ながら、テンポの良い構成にぐいぐい引き込まれ、
主人公をユーモアたっぷりに演じるジム・キャリーを愛さずにはいられない、
間違いなく彼の作品群を代表する一本です!

ドーム状の巨大セットに作られた離島を舞台に、
全て俳優が演じる住民たちに囲まれて暮らす男、トゥルーマンの姿を描きます。

なんと言っても、メディアに対する風刺や皮肉と、ジム・キャリーがサラリとかます笑いのバランスが素晴らしい!

主人公の一生が、生まれた瞬間からテレビに支配されてきたことに恐ろしさを感じつつも、
彼のコミカルな演技によって、悲壮感が前面に出過ぎない作りになっています。

トゥルーマンの純朴な行動ををほほえましく見守り、
世界の真実を探ろうとする彼を本気で応援してしまった私は、
あたかも作中の番組視聴者の一人になったような気分でした。

一方、「トゥルーマン・ショー」のプロデューサー クリストフは、
彼の人生をずっと操作してきた人物であるにもかかわらず、
実親のような無償の愛を彼に注ぐ姿には、どうしたってグッときてしまいます。

トゥルーマンの単なる脱出劇にとどまらず、
親離れ・子離れの切なさまで描き切った監督の手腕はお見事でした。

そして本作で見逃せないポイントは、エンドロール直前の「〇〇はどこだ?」というセリフ。

ここまで極端ではないにせよ、他人の人生そのものをバラエティとして消費し、
不都合が生じたら何事もなかったように切り替える、現代の私たちにも通じる姿だと痛感させられます。

日常をさらすことで出演者に大きなストレスがかかり、
日本だけでなく、世界中で自殺者を生んでいるリアリティー番組のあり方について、
今一度考え直さずにはいられませんでした。

カラッとした笑いからブラックなユーモアまで、どれもが一級品のコメディでありながら、
そこから浮かび上がる、メディアに対する痛烈な批判には思わずハッとさせられる、
どこから見ても完成度の高い、洗練された一作でした。

103分と短めなので、サクッと一本見たい方にもオススメ!

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