劇場公開日 1966年

「実にアメリカ人らしい愚かさが見所」逃亡地帯 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0実にアメリカ人らしい愚かさが見所

2025年3月18日
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鑑賞方法:VOD

何を書こうか思案しながらいくつかレビューを読んでいて、この作品を理解するために必要な知識が少しあることに気付いた。

一つは、保安官という職業は選任されてなるもので、なりたいからとなれる職ではないということ。
この町は小さい。町民全員が顔見知りに近い程度の小さな町だ。その町の権力者であるロジャースには町を動かせるほどの力がある。
ロジャースは、カルダー保安官に対して「保安官にしてやった」と言い。町民は保安官に対して「ロジャースの犬」と言う。
法なんかより権力のほうが力を持つ場合、保安官などただの男となんら変わりないのだ。

もう一つは、アメリカ人のヒーロー願望である。悪を誅する自分は最高にカッコイイ正義なのだ。
悪の定義は?。それは自分が「悪」と認定するだけでいい。そこに事実や証拠は要らないのである。
白人がアフリカ系アメリカ人をボコるのも、白人目線では黒人が「悪」だからだ。
本作の逃亡犯ババーはどうだ?。ヒーロー願望の強いマッチョな男どもから見れば明らかに「悪」である。
本当のババーは?。事件の真相は?。そんなものはどうでもいいのだ。
「悪」であるババーを庇うカルダー保安官もまた、半分「悪」なのだ。

この2点を分かって観ると、一見無秩序でクレイジーに見える物語もスッキリすると思う。
ある意味で、作中では狂ったことなど何も起きていないともいえる。
まあ、町の若者だけではなく、町全体がパーティ気分でハチャメチャなことは気になるところではあるが、少々オーバーだとしてもアメリカに限らずどこででも起こる酒の勢いというやつだろう。

テンポがゆるく、最高に面白いとはいえないが、実にアメリカらしい作品だった。
アメリカ人は全く成長しない。

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つとみ