「テリー・ギリアムの旨さ」12モンキーズ 77さんの映画レビュー(感想・評価)
テリー・ギリアムの旨さ
良かったです。
タイトルからなんとなくブルース・ウィリスとブラッド・ピットのいい男ぶりヒーローぶりを堪能するお話かと思ってたらこんなに奇怪で素晴らしいお芝居がみれる深い作品だったんですね。
というか『12モンキーズ』というタイトルの“旨さ”がこの作品を更に好きにさせてくれています。印象に残りやすく、更に表面的(これは私だけかもだけどw)にも本質的にもミスリードを誘っているなんてニクい監督さんです。映像も良かったです。
最近の私のブルース・ウィリス率の高さ(狙って観てるわけじゃないのにことごとく気になる作品に出てるw)に比例して彼の良い所にたくさん気付かされます。
今作では最初の車内の演技(マデリーン・ストウも!)が特に印象的でした。
ブルース・ウィリスと違ってブラピはかなりご無沙汰だったのですが、やっぱり凄い好き。もう出てきた瞬間からそのお芝居に引き付けられてしまいました。
イケメンがイケメン役をやるよりそういう役じゃない方がより魅力的にみえてしまうひねくれ者なのであの見事な怪演で私の中でまたブラピ株が急上昇しましたw
ブラピの演技に魅せられたりしつつも、物語自体はスロースターターというかここ伏線ですよ!というシーンをあっちこっちに点在させる作業が目立って回収に入るまでは少し物足りない気持ちで観ていました。
逆に言えばラストに近付くにつれ目が離せないくらい良くなるってことなんですが、やっぱり(これは好みの問題ですが)最初から最後まで惹かれっぱなしになれるのが傑作だと思うので、また観たらもっと評価が上がりそうなもののそれは別問題として私の中ではあと一歩、いや半歩くらい何かが足りなくて、好みの作風なだけにすごく惜しい作品でもあります。
あと音楽はすっごく合ってる物とすっごく合ってない物の差が激しかった気がしますw
最初にケチをつけてしまいましたがw、惜しいだけで基本的にはSFとしてだけでなく、ロマンスとしても、チクッとした社会風刺としても、最後までどうなるの!?というハラハラを味わうにしても秀でてる作品だと思います。
正気・狂気、マジョリティー・マイノリティー・疑うことと信じること…色んな【⇔】について考えさせられます。
作中でもジェームズとキャサリンの考えも入れ代わったり、ジェフリーの存在が更に不可解さを呼んで、何がホントで誰がおかしくてどこまでがOKでどこからがNGなの?という映画としても現実に置き換えても興味深いテーマ。
そんな中で特にラブストーリーとしての『12モンキーズ』に惹かれてしまいました。
商業目的のために本来のテーマに無理矢理割り込ませたような恋愛要素が蛇足な映画って数多くあるんだけど、今作はバランスが絶妙で。そりゃ信じる・疑うって話には恋愛は欠かせないんだけどなんていうかあの異常な状態での偏りすぎない恋愛成分の絶妙さ。ここでも監督の旨さが光ります。
狂ってるのかもしれないし吊り橋恋愛なだけかもしれない、なのに純粋さを感じずにはいられない。ジェームズが地下生活ゆえに子供のように色んなことを知らないのがなんだかすごく利いてて「海が見たい」「海が見たいんでしょ?」がとても心に残ってしまいました。
スローモーションもあざとくなることが多い中、むしろ鳥肌が立ってしまうくらいいい演出で、またそのシーンのキャサリン、そしてマデリーン・ストウ(あくまで別人として)の美しいことといったらもう。(当時三十代後半とかびっくり!)
立役者がジェームズ、キャサリン、ジェフリーだったため真犯人は私の中ではあんまりインパクトがなかったものの、その後のドラマのおかげでそんなこと誰であろうとそこはたいした問題じゃないんだなと思わせてくれました。
結果として時代は繰り返し、そして少しだけ変わる。キャサリンの微笑みが物語っているように単なるバッドエンドでもなくてすごくいい終わり方だったと思います。