「面白い題材がギリアム監督の才に溺れた演出で難解に終わるSF映画」12モンキーズ Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
面白い題材がギリアム監督の才に溺れた演出で難解に終わるSF映画
細菌による人類滅亡の危機を救うべく一人の犯罪者が、タイムマシンで過去に送られ情報収集するプロットに、謎の若者グループ”12モンキーズ"のリーダーを絡ませたSF大作。第一次世界大戦から現在へ、そして2010年と目まぐるしく変わる場面展開と主人公が精神症に陥るところなど、幻覚効果を狙ったモンタージュの遊びが面白い。ただ題材の異色さやストーリーの複雑さは良いとして、監督テリー・ギリアムの才能に溺れた演出がサービス精神薄く、難解な結末に戸惑うだけだ。ブラッド・ピットの”12モンキーズ”の謎解きが終盤のクライマックス前に消えて、取って付けたような真犯人が登場する肩透かしを食らう羽目になる。主人公を救おうとする精神科医師のヒロインが何故彼に魅かれるのかも描き切れていない。しかし、一番気になったのは、最近のアメリカ映画の暗さ。偶々なのかも知れないが、かつてのアメリカンスピリット、ヒューマニズム、ユーモア、行動力、正義感がなく、未来に対して希望が持てず怯えるアメリカの印象が強い。
1997年 1月15日
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