劇場公開日 1996年6月29日

「ループ、デジャヴ、スパイラル、そして、僕達の世界、ウイルス後の世界」12モンキーズ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ループ、デジャヴ、スパイラル、そして、僕達の世界、ウイルス後の世界

2020年4月18日
iPhoneアプリから投稿

「歴史は繰り返す」と言われる。
本来は、人は学び、似たようなことが起きても過去の経験から、これを乗り越えていくというポジティブな意味のように思っていた。

しかし、人類は僕達が期待しているよりずっと愚かなのかもしれない。

この映画では、コールが同じ夢を繰り返し見ながら、そして、過去と今(未来)を行き来しながら、実は答えは案外近くにあったのに見過ごし、見当違いの方法に執着して、結局ウイルスの蔓延から人類を守ることが出来ない。

コロナウイルス感染症が広がり、クラスター追跡にばかり気を取られ、人々の命を救う真の手立て見失っている僕達の国の政府のようでもある。

同じことをループの中で繰り返しているようで、実は螺旋(スパイラル)を転がるように下へ下へと落ちて行く。

途中で見る景色は、前に見たシーン、そう、デジャヴのようだと思えても、実は少しずつ少しずつ下へ落ちていくなかで微妙に異なっていて、良い方向になどに決して向かっていないのだ。

作中で使われる、アストル・ピアソラのプンタ・デル・エステ組曲も、繰り返返される旋律のなかで、何か不穏な空気感を強めていく。

12モンキーズの標は、占いのホロスコープのようでもあり、西洋の星座占いにはない猿だけが配置されていて、全ての人類に同じ運命が待ち受けているのだということを示しているかのようだ。
そう、避けようのない悲劇的な運命だ。

ウイルス後の世界を描いた近未来SFだが、とても示唆に富んでいる寡作だと思う。

ウイルス後の世界を描いた作品には、邦画の「復活の日」もあるが、希望に対して、こちらは人類の愚かさと無力感を僕達に突き付ける。

ウイルスの蔓延と闘う世界を描くと作品と合わせて観てみるのも面白いかもしれない。

あれこれ示唆に富む分、僕はこちらの方が好きだ。

※ 因みに、アストル・ピアソラの代表曲リベルタンゴは、本当に名曲です。是非、聴いてみて下さい。

ワンコ