劇場公開日 1996年8月3日

「原作からすると死刑廃止論的内容なのだろうが、映画としては果たして…」デッドマン・ウォーキング KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0原作からすると死刑廃止論的内容なのだろうが、映画としては果たして…

2024年10月29日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

この映画は、1996年度キネマ旬報ベストテン
においていずれも話題作の
「イル・ポスティーヌ」
「ユリシーズの瞳」
「アンダーグラウンド」
「ファーゴ」
に次いで見事第5位に選出された作品だが、
テレビ放映を機に再鑑賞した。

日本は先進諸国の中では
数少ない死刑制度を持つ国として
何かと国際的な批判を受けているが、
私的にもなかなか結論の出ないテーマ。
そんな中、その問題への主人公の思索を
しっかりと描いた内容に
魅入られるようにこの作品を鑑賞した。

映画の最終版で、
尼僧の「助け合えば憎しみから抜け出せる」
との言葉に、
被害者の父親は「どうかな、そうは思えん」
との返答にも関わらず、
二人が融和を得たような
教会で共に祈るシーンで終えた。
私は遠藤周作が好きで、
彼の“同伴”と語られる
寄り添うキリスト像に共感を覚えるが、
ただ、小説で語られる“同伴”は
弱い人々へのそれであり、
悪い人々への“同伴”との印象は
あまり無いように感じている。

この映画で描かれる犯罪は
余りにも残酷過ぎて、
とても正視に耐えられるものではないが、
死刑直前、犯人は遺族への謝罪を行い、
尼僧はキリストのように、
処刑に臨む彼に“同伴”した。

原作からすると、この映画は
本来は死刑廃止論的作品なのだろうが、
一方では、そうでは無い如くに、
処刑と交互に描かれる酷過ぎる犯行シーン、
また、ガラスに映る亡くなった
被害者二人の顔の描写もあり、
果たしてティム・ロビンス監督の真意は
どうだったのだろうか。

KENZO一級建築士事務所