劇場公開日 1974年11月2日

「私刑!」狼よさらば Garuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0私刑!

2022年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

 言わずと知れた男の中の男、チャールズ・ブロンソンの大ヒット作。 このとき53歳、 すでに大スターであったが、この作品で再び男を上げた。 スーパースターは、いくつになっても何をやっても結果を出すのだ!

 これから見てみようかという人に向けて、超簡単に解説する。 この作品は、現実の社会を舞台にした復讐劇である。 妻と娘を強盗に襲われた男が、復讐に燃える修羅と化し、街のチンピラたちを一人ひとり成敗していく。 そして、私刑は次第にエスカレートし、警察からマークされ、 ついには……。 というものだ。

 この映画により、「一人自警団」という名称が、日本人の意識に刻み込まれた。 本国アメリカでは、もしかしたらこういうことを本当にやってしまう輩が出てくるかもしれないという恐れから、公開当時は、私刑を肯定し煽る作品であるとして、賛否両論の的となった。

 実際、ニューヨークのサウスブロンクス地区は、当時、世界で最も治安が悪いエリアと言われており、作品には現実味があったのだ。 一方、作品の舞台はマンハッタンで、ブロンソン演じるポール・カージーは、社会的に成功した建築家。 この設定がまた、恵まれたホワイトカラーが貧しいブルーカラーの命を軽く見ているという捉えられ方で、批判の的となった。

 だが、 作品自体は、単純化された勧善懲悪の物語ではない。 主人公のポール・カージーは、あくまでも普通の親父であり、正義を掲げて突き進むアメリカンヒーローではない。 自分の中に芽生えた激しい復讐の怒りが、 底辺に生きる暴漢たちの怒りと同調したことで、 底知れない不安に襲われ、ひとり苦しむのだ。 ブロンソンの表情を抑えた演技もあって、カージーが私刑を実行するまでの葛藤が、観る者にもヒシヒシと伝わってくる。 最初の犯罪に手を染める時の緊張と恐怖も、追体験しているような心境になる。 その辺の丁寧な演出こそが、この映画のパンチ力の強さに繋がっていると言えるだろう。

 その後、一人二人と成敗することに慣れ、 カージーの私刑はエスカレートしていくのだが、 当然、警察のマークも厳しくなる。 その先が一体どうなるのかは、見てのお楽しみ。 個人的には、私刑賛成である。 理由はひとつ。 スクリーンの中のブロンソンだったらOKなのだ!

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Garu